全てがキミだった


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「おまえと一緒の体育だと、マジでろくなことがない」

「夏休みにプール掃除とか、ホント最悪」とぶつぶつぼやきながら、公平はカサついたコンクリートの階段を下り、水のないプールの底へと降りていく。

授業中のおしゃべりが原因で課された、夏休みの罰奉仕。

「でもさ……なんか公平、楽しそうだよ?」

私はくすりと笑いながら立ち上がり、彼のあとに続いてプールの底へ足を踏み入れさせた。
公平は一瞬足を止め、チラリと横目で私を確認するように見つめてくる。

「……まあ、お前とダラダラ喋れるし、楽しいっちゃ楽しいけどな」

素直じゃない言葉をこぼしながら、制服のズボンの裾を膝上までたくし上げた公平が、唐突にデッキブラシをこちらへ向けて勢いよく振ってきた。

濡れたブラシの毛先から放たれた水滴が、真夏の太陽を反射してキラリと綺麗な弧を描き、私の頭や肩にパシャッと降り注ぐ。

「ちょっ……え、うわっ! 何するの!?」
「罰を言い渡された仕返し」
「仕返しって……! 私だけのせいじゃないじゃん! うわ、シャツまで濡れた。最悪!」
「知らねぇよ」

冷たい水の感触に声を上げると、公平は悪びれもせず、下あごをピクピクさせながらニシシと意悪く笑った。
その悪ガキみたいな顔にむっとして、私も負けじとデッキブラシにたっぷりと水を吸わせ、大きく振りかぶる。

「……お返しっ!」
「お、おい! やめっ――」

弾ける水飛沫と、真夏の青空。
あの日のプールには、ふたりの笑い声がどこまでも高く響いていた。