全てがキミだった


「連絡は? 今でもちゃんと取ってるわけ?」

爪を乾かしながら、綾が探るような視線を投げてくる。
その言葉に、私は「ううん」と小さく首を横に振った。

「一度も?」
「うん」
「高校卒業してから、本当に一回も?」
「……だから、そう言ってるでしょ?」
「向こうからも一回も来てないの?」
「向こうからは……来たよ。何回か」
「で、返信は?」
「……途中まで打つんだけどさ。いつも途中で消しちゃうんだよね」

膝の上で自分の指をギュッと強く絡めていると、視界の隅で綾が片方の眉を跳ね上げたのが分かった。

「はぁ? あんた、そんな状態で今でも引きずってるわけ? なんでそこで文字消しちゃうのよ。送ればいいじゃん。それに、それって相手からしたら、ただの既読無視だからね」

既読無視って……。
まぁ……そうなるんだろうけど……。

「だってさ……『元気?』って送ること自体、ああ、もう公平は私の傍にいないんだな、離れちゃったんだなって実感が湧いて悲しくなっちゃうし……『最近どう?』なんて聞いたら、そこでミサキの名前が出てくるかもしれないじゃん。そんなの、自分から恋を終わらせに行くような質問、怖くて送れるわけないよ」

言葉にすると、余計に自分の意気地なさが浮き彫りになって胸が痛む。

送信ボタン一つ押せないまま、画面に浮かんでは消える文字。
私は6年間、ずっとその途切れたラインの画面の前で立ち止まったままなのだ。