全てがキミだった


窓から差し込む夕方の強い日差しに、目を細める公平。
逆光の中でオレンジ色に縁取られた彼の姿が、息をのむほど綺麗で、胸が苦しくなるくらい大好きだった。

「今、なんか送って。俺も友達追加したいから」
「え、あ、うん……」

公平の画面を開いて、まだ何も履歴のないトーク画面をただ見つめる。
それすらも、ドキドキして、これからここでどんな会話をしていくんだろうって想像しただけで、指先が震えた。
とりあえず、『よろしく』という、足の長いうさぎのキャラクターがぺこりとお辞儀をしている動くスタンプだけを送った。

「ははは。うさぎなのに、耳より足が長いって」

そのスタンプを見て、公平がおかしそうに笑う。
そして、そのスタンプが何度もぺこりぺこりとお辞儀を繰り返している画面を私に向ける。

「おまえ、今日帰ったら真っ先にメッセージ送れよ? 家にいる時、暇すぎて死にそうだから」
「……うん、わかった」

ポケットの中で、先ほど彼のQRコードを読み取ったばかりのスマホが、まだ彼の体温を覚えているかのようにじんわりと熱を帯びている気がした。

画面に表示された『公平』というたった二文字の名前。
これまでずっと遠くから見つめることしかできなかった彼の日常に、私専用の小さな入り口がポツンと開いたような、奇跡みたいな心地がしていた。

あの頃の私は、どこまでも真っ直ぐだった。

目の前で起こるすべての出来事に対しても、公平に対しても。

胸の奥から溢れ出す「好き」という感情のままに動いて、彼から届く一言に世界が色づくのを、ただ純粋に信じていたんだ。

夕風に揺れる彼の前髪の隙間から覗く瞳を見つめながら、私は壊れものを扱うように、ポケットの中のスマホを強く、強く握りしめていた。