全てがキミだった


「すごい荷物ね。一体どれだけ買ってきたのよ」
「あはは、途中でテンション上がっちゃってお土産買いすぎた。入り切らなくてバッグ買い足したくらい」
「あんたねぇ……お金の方はちゃんと大丈夫なの?」
「平気平気、毎月ちゃんと計算して貯金はしてあるから。無計画には使わないって」
「さすがねぇ。誰かさんにも見習ってほしいわ」

お母さんがチクリとこちらに聞こえるように嫌味を混ぜながら感心してみせると、綾は「まあね」と少し誇らしげに鼻を鳴らした。

「あ、よっ、亜美」

一通りお母さんと梓との再会を喜ぶやり取りを終えて、ようやく背後に突っ立っていた私の存在に気づいた綾が、片手をひらひらと軽く挙げてきた。

そう、2歳下の次女である綾もまた、私のことを昔から一度も『お姉ちゃん』と呼んだことがない。

長女としての尊厳も威厳も、この家には最初から存在しないのだ。

ドサリと置かれた重たいボストンバッグや紙袋を手分けしてリビングへと運び込む。
手際よくお母さんが皮をむいてくれたウサギ形のリンゴを、ローテーブルを囲んだ女四人で賑やかにペロッとたいらげた。

「おいしー! やっぱお母さんの剥くリンゴが一番好き」と素直に甘える梓と、都会での仕事や一人暮らしの苦労話をテキパキと話す綾。

その会話の輪の端っこで、私はサクサクと音を立ててリンゴを噛み砕きながら、どこか遠い世界で繰り広げられているような眩しい光景をただ眺めていた。