全てがキミだった


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「ただいまー」


玄関から重たいドアが開く音がして、続いてドサッと大きな荷物が落ちる鈍い音がリビングまで届いた。

ちょうど夕飯を終え、いつものように女三人でテレビを眺めながらダラダラと過ごしていた私達は、一瞬示し合わせたように顔を見合わせ、そのままぞろぞろと玄関へ向かった。

当然のように、一番にバタバタと駆け出していったのは梓だ。

私は最後に、お座なりにスリッパを引きずりながら、のっそりとみんなの後を追う。

「綾姉! おかえりー!」

梓が弾んだ声で綾の大きな手荷物を受け取り、私には一度だって見せたことのないような、満面のキラキラした笑顔を綾へと向けた。

「おー、あずぴー! なんかまた一段と身長伸びたんじゃない? どんどんお姉さんになっちゃって」
「へへっ、そうでしょー」

頭をくしゃくしゃと撫でられて、梓が嬉しそうにはにかむ。

久々に帰ってきた次女の綾は、相変わらずどこへ行っても目立つ派手さをまとっていた。

髪色は鮮やかな赤に染め抜かれ、目元にはバサバサとした付けまつげがこれでもかと主張している。
まぶたが重たくないのだろうかと、思わず心配になるくらいだ。

けれど、どこか垢抜けた都会の風を漂わせるその姿は、この家に流れるどこか停滞した空気を一瞬で塗り替えてしまうくらいの存在感があった。