幼馴染のミサキが好きだと聞かされてもなお、どこかで「私にもまだチャンスはあるんじゃないか」と愚かにも期待してしまう。
東京に行って遠く離れてしまったミサキより、毎日学校で同じ空気を吸い、隣や近くにいられる私の方が絶対に有利なはず。
そう、都合よく思い込もうとしてしまうのに。
……ミサキは、公平のことをどう思っているんだろう。
だって、付き合ってはいないわけでしょ?
そもそも、公平はミサキに好きだってこと伝えたのかな。
公平の気持ちを知っていてもなお、ミサキが東京に行ったのだとしたら、ミサキは公平より自分の夢を選んだってことだ。
そんなやつのこと、忘れてしまえばいいのに……。
顔も知らないミサキがどんな子なのかは分からないけれど、公平を想う気持ちの深さなら、私は絶対にミサキなんかに負けていないと胸を張って言える。
たとえば、少し茶色く染めているけれど手入れが行き届いていて枝毛なんてひとつもないサラサラの髪。
笑うと頬にぽつんとできる、ちいさなえくぼ。
そして、可笑しそうに顔いっぱいに笑ったときに覗く八重歯と、一気に幼くなる子供みたいな表情。
そんな公平のすべてが、たまらなく好きだ。
授業中、私のすぐ目の前の席に座る彼の大きな背中を見るのも大好きだった。
眠そうに欠伸をするたびに肩が大きく上下して、たまに窓から羽虫が迷い込んでくると、周りにバレないようびくっと小さく体を震わせる。
そんな誰も気づかないような細かな癖まで、私は知っている。
幼馴染だからって何だっていうの?
遠くに行ったミサキは、過去の公平しか知らないくせに。
今の公平の姿を誰よりも知っているのは、ミサキじゃなくて、この私だ。


