全てがキミだった


ああ……嫌だ。

いっそのこと、両手で強く耳を塞いでしまいたかった。

きっかけの話題を振ったのは、他ならぬ私自身なのに。
自ら尋ねておいて、公平の口からその子への想いが零れ落ちるたび、ギシシと音を立てて胸の奥が痛ましく軋んでいく。

……私、一体なんのために公平の隣にいるんだろう。

ふと、そう思った。

公平は、『ミサキ』という大切な存在がありながら、どうして私とこんなにも一緒にいたがるのだろう。

ただ、彼女が遠くへ行ってしまった『寂しさ』を埋めるための代用品にされているだけなのだろうか。

罰ゲームだと称して髪を切らせたのも、二人きりで放課後を過ごしたのも、こうして夕暮れの田舎道を並んで歩いているのも。
すべては、ぽっかりと空いた彼の心の穴を塞ぐための、都合のいい穴埋めでしかないのだろうか。

あまりにも公平のことが好きになりすぎていて、私はもう、彼の本当の気持ちが何も分からなくなっていた。

「どうして私なの?」と直接理由を問いただしてみたい。
けれど、そんなことを聞けるような特別な立場なんて、私には最初から与えられていない。

ただの同級生。
ちょっと手先が器用で、何を言っても断らない都合のいい存在。

ここで重い女だと思われるのも、彼に鬱陶しがられて距離を置かれるのも、たまらなく怖かった。

そして、公平がどうやって『ミサキ』と出会い、どんな風に惹かれ合っていったのかも、結局聞くことはできなかった。

聞かなくたっていい。
どうせ明日になれば、聞きたくもない噂話として嫌でも誰かの口から耳に入ってくるんだから。

波の音だけが虚しく響く夕暮れの道で、私は言葉を失ったまま、ただ隣を歩く彼の影を踏みつけることしかできなかった。