全てがキミだった


「別に、付き合ってるわけじゃないよ」

噂の真実を確かめたくて、西日に照らされた夕暮れの力を借りて思い切って尋ねてみた。
今考えると、なんてバカなことをしたんだろうと、乾いた笑いしか出てこない。

片想いって、こんなにもあっけなく終わってしまうんだなと、この時初めて思い知らされた。
ガタガタと大きな騒音を立てて、足元から崩れ落ちていった私の想い。

打ち寄せる荒い波の音のせいで、胸の奥で渦巻く感情の扱い方が余計にわからなくなっていく。
コップの縁で今にも溢れ出しそうな、表面張力ギリギリの切なさは、ほんの小さな振動で崩れてしまいそうだった。

「あいつ、自分の夢を追っかけて東京に行ったんだ」

やっぱり、聞かなければよかった。
どこまで愚かで、おめでたい頭をしているんだろう。
噂は噂のまま曖昧にしておけば、傷つかずに済んだかもしれないのに。

本当に、馬鹿だ。

錆びついたガードレールに両手を預け、沈みゆく夕日と海を静かに眺める公平の横顔を、私はまっすぐ見ることができなかった。

「美容師になりたいんだってさ、あいつ。昔からの夢だったみたいだけど……実際いなくなると、やっぱ寂しいし辛いよな」

ぽつりと漏らされた公平のその一言が、冷たい風に乗って私の胸を鋭く貫いた。