「よかった。池内に直接伝えることが出来て」
「うん」
「今度の連休で、ミサキがこっちに帰ってくるんだ。それから、ミサキの両親に挨拶してくる」
「そっか」
私達の間には、とても静かな時間が流れていた。
空は青々と晴れ渡っていて、この報告を聞くには、最高の天気だと思う。
風が吹き抜けるたび、頭上の樹木がサラサラと葉を揺らし、木漏れ日がベンチの端を優しく撫でていた。
「本当におめでとう、公平」
もう一度、今度はしっかりと彼の目を見て言葉を贈る。
公平は少し照れたように鼻の頭をかくと、「ありがとな」と深く頷いた。
手の中の泥だらけのボールを大切そうに包み込みながら、彼は未来を見つめる顔をしている。
そこにはもう、高校時代の幼い戸惑いも、微妙な距離感への迷いもない。
私が6年間温め続けた初恋は、今日、この澄み渡った秋空の下で、綺麗な思い出として幕を下ろした。
胸の奥には確かに小さな痛みが残っているけれど、それ以上に、彼と出会えたこと、そして今こうして心から「おめでとう」と言えている自分が、どこか誇らしかった。
「式の準備とか、これから忙しくなるね」
私は立ち上がり、秋の光をいっぱいに浴びながら、公平に向かって真っ直ぐに微笑んで見せた。


