「俺さ、こっちに帰って来たのには、理由があるんだ」
公平は、あの真っ黒なボールをギュッと握った。
何かを言い躊躇っているのが、痛いほど私に伝わってくる。
「本当は、俺、こっちに戻って来てさ、池内に会う勇気がなかった。ここには、池内がいるってわかってたのにさ。おまえに会いに行けなかった……会う資格がないっていうか……」
「………」
「何かあるわけじゃないけど、なんとなくな……。だけどさ、俺らって、やっぱり何かで繋がってんのかもな。まさかあのコンビニでおまえに会うなんて思ってもいなかったよ」
公平は言った後に、どこか照れくさそうにハハッと笑った。
私も深く頷きながら、一緒に笑う。
「6年ぶりに会った池内は全く変わってねぇし」
「それは、公平だって同じじゃん」
「そうか?」
「そうだよ」
また、二人で顔を見合わせて笑う。
風がそっと吹き抜け、ベンチの横でカサリと落ち葉が舞い上がった。
「……理由って、なに?」
笑い声を小さく収めながら、私はそっと問いかけた。
ボールを握りしめたままの公平の大きな手が、わずかに強張るのが見えた。
ずっと心の中に引きずってきた17歳のあの頃と、23歳の今が、穏やかな夕暮れの中で静かに交差していく。
どんな言葉が返ってきても、今の私ならきっと、まっすぐ受け止められる気がしていた。


