”ドジないけうち”
「ひどいっ!!この机に、これから何人って後輩が座るんだよ?ただの恥さらしじゃん」
私が頬を膨らませて公平の腕をポカポカと叩くと、公平は大きな声を上げて楽しそうに笑った。
「いいじゃん。立派な思い出だし」
私に殴られておきながら、首をすくめた公平はなおも、『一番池内らしいし』などと言ってくる。
自分の机に刻まれた無邪気で不躾な文字と、悪びれもせず誇らしげに鼻を鳴らす公平の顔。
それが段々面白くなって、私は悔しさも忘れて公平と一緒になって笑った。
卒業式間近、夕陽がオレンジ色に差し込むこの思い出のたくさん詰まった教室に、公平と二人きり。
静まり返った校舎に、私達の笑い声がどこまでも高く響き渡った。
私は、机だけではなく、教室の壁にも思い出を刻んだ。
窓際の壁の隅、日陰になる小さなスペースに、誰にも気づかれないように、ボールペンの細い筆跡でそっと書き残す。
そこには、ただ一言。
私が公平と同じクラスになってから2年間、後ろの席からずっと見つめ続けてきた、大切な背中の記憶を記していた。
“大好きなあなたの背中”
これは、公平には内緒だ。


