全てがキミだった


彫るとするならば、公平の事を彫りたい。

だけど、そんな事、できるわけない――。

「なんだよ、早く彫れよ」
「うん、わかってるよ。だけどちょっと待って。今真剣に考えてるんだから」
「そんなの、考える程のもんじゃないだろ?しかもさ、今までの事を思い出したらすぐに彫れるじゃん」
「たとえば?」

私が首を傾げて聞くと、『貸せよ』と、公平に彫刻刀を横取りされた。
木くずを息でフッと吹き飛ばしながら、公平が私の代わりに机に迷いなく文字を彫っていく。
カリカリ、と静かな放課後の教室に刃先が木を削る音だけが響いていた。
公平の手元をじっと覗き込むと、私の机の端に少し不揃いな文字が形作られていく。
一体、何を書いているのだろう。
公平の真剣な横顔と、削られていく木肌を、私は息をのんで見つめていた。