全てがキミだった


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「公平、何してるの?」

私たちは3年になっても同じクラスだった。
相変わらずこの微妙な関係性は続いていて、ただ一緒にいられる時間だけが幸せだった。
オレンジ色に染まる3学期の放課後、人影の消えた教室で一人残って何かを必死に彫っていた公平に声をかけた。

「ん?何って、彫ってんだよ。俺がここにいた証に」

一旦私に顔を向けた公平は、いつものように軽く微笑んで、彫刻刀の刃先が当たる机を指差した。

それを私は覗いてみる。

“せいしゅんじだいのおれのつくえ”

机の右上に、でかでかとそんな事が彫られていた。

「器用だね」
「だろ」

また、得意げに微笑む。

「池内もなにか彫ってみろよ」

公平は、顎で私の机を差しながら、自分の体温が残る手に持っていた彫刻刀を、そのまま私の手に持たせる。

3年になっても、なぜか私は公平の後ろの席を何度も引き当てた。
いつも、公平の大きな背中を眺めて授業を受けていた。
どんな時にも公平の真っ白なシャツが目に入って、全く授業に集中出来ない事さえあった。