全てがキミだった


「……わかってるよ。子供に子供って言われたくないしっ」
「はいはい」

11歳相手に、本気で頬を膨らませた私に向かって、梓は呆れたように返事をした。

「じゃあね。梓、お母さんにプレゼント渡してくるから。勝手に机の中とか開けたらマジでキレるからね」
「開けないし」

また頬を膨らませた私は、涼しい顔して部屋を出ていった梓の後を、ずっと見ていた。

一気に静けさに包まれた部屋。
すぐに、一階でお母さんの弾んだ喜ぶ声と、梓の満足気な声が聞こえてきた。
私だけが、何も渡せていない。
お母さんの誕生日も、自分のこれからのことも、そして公平への想いの捨て方も。
23歳にもなって、何ひとつ形にできていない自分が、あまりにも滑稽で惨めに思えた。

部屋に戻ろ……。
今はそうした方がいい。

一階から漂ってくる華やかな香水の匂いと、幸せそうな親子の会話から逃げるように、私は静かに梓の部屋を後にした。
廊下を踏みしめる自分の足音が、やけに重く響いていた。