全てがキミだった


「誕生日おめでとう」

気まずさを誤魔化すように、さりげなく言ってみる。

「はいはい、ありがとう」
「今度さ、バイト代出たら何かプレゼントするから」
「期待なんてしてないわよー」

たっぷり嫌味の含まれた言い方に、ズキリと胸が痛んだ。

あー、何をやっても駄目だな私――。

バイトから正社員になることも考えられず、公平のことで頭はいっぱい。
それに、挙句の果てにはお母さんの誕生日さえ忘れている。
何ひとつ上手くいかない自分が嫌になる。

荷物の中に手紙も一緒に入っていたらしく、お母さんは嬉しそうにそれをゆっくりと読んでいた。

その間に、わたしは少し居心地が悪くなってキッチンへ向かい、冷蔵庫から取り出したパックからグラスに牛乳を入れる。

「お母さんにも、入れてちょうだい」
「へーい」

もうひとつのグラスに牛乳を入れてテーブルに戻ると、読み終わった手紙が無造作に広げられていた。

『いつまでも若いお母さんでいてね!』

丁寧で可愛らしい綾の文字でそう書かれているのが、嫌でも目に入った。
お母さんはその手紙を愛おしそうになぞりながら、牛乳に口をつける。

「やっぱり綾は頼りになるわねぇ。離れて暮らしてても、ちゃんと親のこと考えてくれてて」

お母さんの何気ない一言が、今の私にはチクチクと刺さった。

目の前にいる長女の私は、プレゼントどころか実家から出て一人暮らしもできない、出来損ないだ。
綾と比べられているような気がして、私は自分のグラスの牛乳を一気に流し込んだ。

冷たい感覚が胃に落ちていくけれど、胸の奥のモヤモヤは少しも消えてくれなかった。