全てがキミだった


男の子って、みんなこんな風に軽々しく思わせぶりな言葉を女の子にかけるの?
お願いだから、期待なんてさせないでほしい。
ただでさえ、「池内に切ってもらいたかった」なんて言われて、胸の奥で心臓がうるさいほど激しく暴れているというのに。

ねえ、公平。
罰ゲームなんて理由をつけて呼び出したけれど、もしあの体育の時間、あなたの前をトロトロ走っていたのが私じゃなく他の誰かだったら……その子にも同じようにハサミを握らせたの?

『○○に切ってもらいたかった』

その子の名前を呼んで、今日と同じように少し照れたような顔で、甘い声をかけたの?
そんなこと……聞けるわけがないがないけど。

「……はい、終了」

胸の中に渦巻く問いをすべて飲み込んで、私は努めて素っ気なく言った。

「サンキュー! おおー、すげぇ。めちゃくちゃちゃんと切れてんじゃん!」

床に敷いた古新聞の上で、公平が手鏡をいろんな角度に傾けながら声を弾ませる。
「まあね」と、私は少し得意げに肩をすぼめてみせた。

「やっぱ、おまえはすごいよ。ほんと、おまえにしか頼めないわ」

……それって、どういう意味?

ただの手先の器用さを褒めているだけ?
それとも、私という存在に対する、特別な意味?

私は、公平が思っている以上に単純なんだ。
だから、お願いだから期待なんてさせないで。
そんな顔で、そんな言葉を投げかけられたら……私、公平がくれる『一番の特別』を、本気で求めてしまうから。