「先生だってなーっ、こんな時まで、こんな事、言いたく、ない、んだからなーっ!」
だんだんと距離が開き、先生の声が途切れ途切れになっていく。
振り返ると、膝に手を当ててハァハァと肩を揺らす担任の姿がどんどん小さくなっていった。
その隙を見逃さず、私達はさらに走るスピードを上げた。
「池内、こっち!」
「うわっ!」
急に強い力で右手を引かれ、私達は体育館の大きな陰へと滑り込むようにして、校舎裏の狭いスペースへと身を潜めた。
ドクドクと、走ったせいだけじゃない激しい鼓動が耳の奥で暴れている。
握られた手から伝わる、公平の手の大きさ。
泥で汚れ、冷たい水で濡れているはずなのに、包み込むような彼の掌はどこまでもあたたかくて、胸の奥のドキドキがどんどん速く、大きくなっていく。
「ふぅ……まじで危ねぇ……」
壁に背をあずけた公平が、切れた息を整えながら、ふっと悪戯っぽく口角を上げた。
繋がれたままの手。
引き寄せられた距離の近さ。
校舎裏の静けさの中で、公平の汗の匂いと、ぬれた体育服のひんやりとした気配が混ざり合い、逃げ場のない甘い緊張感が二人の間に満ちていった。


