全てがキミだった


「おら、ボーっとしてっと汚れんぞっ!」
「酷いっ。さっき不意打ち無しって言ったじゃんか!」
「ハハっ、投げたもん勝ちだよっ!」
「この卑怯者っ!」
「うわっ!!」

逃げようとする公平の背中を目掛けて、私は手に持っていた水風船を思い切り投げつけた。

「池内、おまえマジで狙いすぎ!」
「フンだ。さっきの仕返し!」

私達は、クラスの勝敗がかかった体育祭の狂騒なんてすっかりそっちのけで、まるで小学生に戻ったみたいに夢中で水風船を投げ合い、笑い転げた。

放送委員が流す体育祭定番のポップなBGMが遠くから響いてきて、その高揚感が妙にテンションを押し上げていく。

バシャッと音を立てて水風船が破裂するたびに、弾けた水滴が宙を舞い、雲の切れ間から降り注ぐ太陽の光を反射してキラキラとまぶしく輝いた。

白と紺の体育服も、濡れて額に張りつく髪も、二人揃ってビショビショだ。
足元には水たまりができ、ぬかるんだ土が泥跳ねを作っていたけれど、そんなことすらもうどうでもよかった。

公平の弾けるような笑顔を見るのも、こうしてふたりだけで無邪気に笑い合う時間も、全部ずっとずっと欲しかったものだったから。

だからこそ――弾けて消える水滴の美しさが、胸が痛くなるほど切なかった。