全てがキミだった


「まだ作るから、不意打ちで投げたりすんなよ」
「しないよ」

呆れたように、けれど小さく笑いながら返した。

公平は買ってきたパックの中身を全部使い切る勢いで、次々と水風船に水を注ぎ入れていく。
ゴムが水で丸く膨らんでいくのを眺めるその瞳は、まるで幼い頃に戻った少年のように無邪気に輝いていた。

「よし、出来た! はい、5個ずつな」

両手にたぷたぷと揺れる水風船を抱え、公平が得意げに差し出してくる。

「……なにするの?」
「何って、決まってんじゃん。水風船合戦」
「二人で?」
「なんだよ、不満?」
「いや、別に……」

悪戯っぽいにやりと笑う公平の顔をまともに見られなくなって、私はそっと視線をそらし、足元へと俯いた。

「きゃっ!」

突然、足元でバシャッと泥が跳ねた。
嫌なことを思い出していた私は、足首にまとわりつく冷たくて気持ちの悪い感触で、一気に現実へと引き戻される。

「なにボーっとしてんだよ」

足元の泥から視線を上げると、そこには両手にふたつの水風船を握りしめた公平が立っていた。

……なんで?

あのタキシード姿の公平。
そして、本当はミサキと走りたかったんだろうなっていう、汚い嫉妬。

ミサキに対して、羨ましさと嫉妬を抱いてしまって、どう反応したらいいのか分からなくなる。

またそうやって、私を惑わせようとしてるんでしょ。

一方通行の私の気持ち、利用しすぎだ、バカ野郎……。