「わり、お待たせ」
体育服に着替えて戻ってきた公平が、首元をかきながら私の元へと走ってくる。
私は腰かけていた水道の縁からお尻を上げると、抱きしめるようにして持っていたさっきのタオルを、そっと公平に差し出した。
「サンキュ。……汗臭かった?」
公平がタオルを受け取りながら、少し気まずそうに笑って尋ねてくる。
「かなりね。しかも湿ってたし」
胸の奥の甘い疼きを隠すように、私はわざと可愛げのない言葉を返して軽く肩をすくめてみせた。
公平も「ひでぇな」とハッと楽しそうに笑い、その白い歯を見せる。
「なぁなぁ池内、これやらね?」
そう言うと、公平は持っていたポケットから何かを取り出し、誇らしげに私に見せてきた。
「なにこれ」
「え、池内知らねぇの? 水風船」
「知ってるよ。そうじゃなくて、なんで急に水風船なのかって聞いてるの」
からかうような公平の言い方に、私はちょっとぶすっとして答える。
公平は気に留める風もなく、小さなビニール袋から色鮮やかな水風船をひとつ取り出すと、目の前の水道の蛇口にその口をきゅっとはめ込んだ。
ひねられた蛇口から勢いよく水が流れ込み、薄いゴムがたぷたぷと大きく膨らんでいく。
水圧で重みを増していくカラフルな球体。
公平は手慣れた手つきで水を止めると、水風船の口をキュッと手早く固く結んだ。
「はい」
冷たくて重たいその水風船が、公平の手からわたしの掌へとそっと乗せられた。
ひんやりとした感触が、火照った肌に心地よく伝わっていく。


