全てがキミだった


「池内、ごめんな。突然、こんな……」

周りからの視線とどよめきを背中に浴びながら、公平が申し訳なさそうにぽつりと呟いた。
私は言葉にできず、首を小さく横に振るのが精一杯だった。

泥で汚れたグラウンドの上で、シックなグレーのタキシードを纏った公平の姿は、あまりにも浮いていて、けれど眩しいほどに目を引いていた。通り過ぎる生徒たちの視線が痛いほど刺さる。

「……どうして、普通に走らなかったの? みんな一人でゴールしてるのに。これって……公平だけじゃない?」

胸の動悸を抑え込みながら、やっとの思いで声を絞り出した。

他のクラスの走者たちは、どんなに奇抜な衣装に着替えても、たった一人でグラウンドを走り抜けてゴールしていたはずだ。
どうして公平だけが走るのをやめて、わざわざ観覧席までわたしを迎えに来たのだろう。

「他の奴らが引いた紙になんて書いてあったのかは知らねぇけど……俺のには、こう書いてあった」

公平は少し困ったように眉根を寄せると、タキシードのポケットからくしゃりと丸まった小さな紙切れを取り出し、そっと私の掌の上に握らせてきた。

彼に手を引かれたまま、泥のついたグラウンドをゆっくりと歩きながら、私はもう片方の手でその紙をそっと開いていく。
折り目を開いたそこに書かれていた文字を目にした瞬間、私の息が止まった。