全てがキミだった


「ねぇ。やっぱさ、美容室行きなって。ジグザグになっても知らないからね」
「おまえ、さっき俺が言ったの聞いてなかったのかよ」
「……」
「金なんてないの」
「そんなの、私には関係ないじゃん」

吐き捨てるように言った直後、自分でも驚くほど可愛くない声が出たことに胸がキュッと縮んだ。

言ってしまったあとに「どうしてあんな可愛くない言い方をしたんだろう」と後悔するなんて、これまでにも腐るほど経験してきたはずなのに。
私はどうして、公平の前だとこうも素直になれないのだろう。
なんて学習能力がないんだろう、と嫌気がさす。

窓から眩しいほどに差し込む西日は、二人きりの教室をオレンジ色に染め上げ、まるで舞台の上にぽつんと残された私達だけにスポットライトを当てているみたいだった。

ギラギラと視界を焼く強い光に目を細めながら、私は右から左へとゆっくり流れていく夏の雲を見上げる。

遠く高い空の向こう。
指先で簡単につぶせてしまえそうなほど小さく見える飛行機が、そのお尻から一筋の真っ白な線を吹き出しながら、夏の青に爪痕を残すようにゆったりと飛んでいた。

気まずさに耐えかねて飛行機雲を目で追っていると、下からぽつりと、公平の低い声が降ってきた。

「……俺は、池内に切ってもらいたかったの」

ほら、また。
そうやって平然と、ズルくて勝手なことを言う。
せっかく冷まそうとしていた胸の奥が、再び火傷しそうなほど熱を帯びていくのを感じていた。