全てがキミだった


公平は軽やかな足取りでスタートを切ると、あっという間に中央の机へとたどり着き、指示の紙が入った箱の中にすっと手を入れた。
迷うように慎重に一枚を選び出し、小さく畳まれた紙を広げる。

その瞬間、公平は微かに眉間にしわを寄せ、不思議そうに首を傾げているようだった。

え……な、なに?
一体、何が書かれていたんだろう……?

胸の鼓動がドクドクと早くなる。
私の視線は、公平の指先と表情に釘付けになっていた。

彼はラックにかかった様々な衣装を見渡し、迷いのない手つきでひとつの衣装に手を伸ばした。

そして、急いで“それ”に着替えていく。
ボタンを留め、鏡も見ずに素早く身につけ終えたその瞬間――。

「きゃああああっ!!」
「嘘でしょ、平田くん!?」
「やっば!平田くんって、こんなカッコよかった?」

グラウンドを揺らすほどの、普段の公平には飛ばないような熱狂的な黄色い声が、すべてのテントから一斉に湧きあがった。
女子たちの悲鳴に近い歓声が響き渡る中、私は公平のその姿を見て、ただただ目を丸めるばかりだった。

周りのように黄色い声を上げる余裕なんて、今の私には一切なかった。
胸がぎゅっと締め付けられて、息をするのも忘れてしまう。

あまりにも似合いすぎていて、あまりにも眩しすぎて――息をのむことしかできない。

「ちょ、ちょっと、亜美!! 見て、あの格好……っ!!」

興奮冷めやらぬ香織に激しく肩を揺らされても、私は何の反応も出来なかった。
ただ、目の前で色鮮やかな光を浴びながらグラウンドを駆け抜けていく公平の姿から、目を離すことができずにいた。