私達のクラスの第一走者は、無難にスーツにネクタイを締めたサラリーマンの格好だった。
過激な衣装じゃなかったことに、走り終えた本人は心底ほっとした様子で胸を撫で下ろしていた。
けれど、バトンが渡るにつれて雲行きがあやしくなっていく。
次は、学ランの裾が短い短ランに、頭には立派なリーゼントのウィッグをかぶったヤンキー。
泥を跳ね上げながら突っ走る姿にグラウンドは大爆笑だ。
その次は、背中に大きな刺繍が入った真っ赤な特攻服を着た暴走族。
さらにその次は、なんと看護師。
絶妙に丈が短いミニスカから生足を覗かせ、大きなナースキャップをグラグラ揺らしながら走る姿に、女子生徒たちから黄色い悲鳴と冷やかしの声が飛ぶ。
走者が進み、アンカーに近づくにつれて、用意された仮装は容赦なく過激さを増していった。
それを見守るだけの女子たちのテンションは、完全に最高潮に達している。
「あははっ! やばい、お腹痛い……っ! めっちゃ似合ってない!?」
私の隣に座る香織なんて、お腹を抱えてよじれるほど爆笑しながら、グラウンドに向かってメガホンを振っていた。
会場全体が割れんばかりの歓声と爆笑に包まれる中――。
ついに、バトンが繋がれる。
いよいよ、公平の番だ。
さっきまでの浮かれた空気とは一変して、私の胸の奥がキュッと縮こまり、急激に激しい鼓動を打ち始めた。
抱きしめたタオルから伝わる公平の匂いと熱を感じながら、私は手が白くなるほど固く握りしめ、スタート位置へとつき出していく彼の背中をただじっと見つめていた。
まるで自分の出番であるかのように、息をするのも忘れるほどの妙な緊張感が、身体中を駆け巡っていた。


