全てがキミだった


「あ、おいっ、池内っ!!」

背後から届いた公平の焦ったような声が、夏空の静寂を切り裂く。

だけど、私はもう振り返らなかった。
溢れ出そうになる涙を堪えきれなくなり、視界が歪んだ瞬間に、弾かれたように公園から走り出ていた。

追いかけてくるかもしれない足音も、背中にかかる彼の声も、すべてを振り払うようにして。

走って、走って、走って――。

真夏の重たい風が頬を打つたびに、溜め込んでいた涙がポロポロととめどなく溢れ落ちていく。

どこへ向かっているのかも分からないまま、アスファルトを必死に蹴りつけた。
荒くなった息が熱く喉を焼き、肺が悲鳴を上げているはずなのに、不思議と身体の苦しさは一切感じなかった。

……あぁ、そうか。

私という存在の細胞は、きっと公平が近くにいなければ、正常に機能なんてしないのだ。
彼がそこにいて、笑ってくれていなければ、私は息をすることさえうまくできない。

それなのに。

麻痺してしまった全身の中で、ただひとつ、この胸の奥だけが――ちぎれそうなほどに、どうしようもないほどに痛かった。