全てがキミだった


「……らない」

喉の奥がキュッと絞り締められるような感覚に耐えながら、震える声を必死に抑え込んで、言葉を絞り出した。

「いらない……! ていうか、もらえないよ、そんなの」

手の中にあった、あの黒い点がついたボールを、私は公平の硬い胸元へと強く押し付けた。
掌から離れた瞬間に残ったのは、泥の匂いと、あまりにも残酷な公平とミサキの「思い出」だけだった。

こんな大切な、ミサキとの記憶が刻まれた宝物を、どうして私に手渡そうとするの?
どんな顔をして、どんな気持ちで受け取ればよかったの?

「池内……?」

突然の私の行動に驚いた公平が、目を見開いて息をのむのが分かった。

――初めてかもしれない。

出会ってからずっと、公平の前では物分けの良い、「相棒」のフリをし続けてきた私が、感情を剥き出しにしてこんな声を張り上げたのは。

とっくに、私の中の許容量なんて限界を超えていた。
呼び出されて浮かれていた自分も、暑さを忘れて彼の笑顔に見惚れていた自分も、すべてが惨めで、愚かで、情けなくてたまらない。

ミサキのことを思い出すための身代わりでもなければ、彼の罪悪感を和らげるための便利な聞き役でもない。

私は……公平の都合のいい女なんかじゃないんだよ。

溢れ出しそうになる悔し涙を必死に引っ込めるように、私はぎゅっと唇を噛み締め、驚きに固まる公平の顔をまっすぐに見つめ返した。