全てがキミだった


「俺さ、ガキの頃かなりの人見知りだったんだ。友達と遊ぶのも苦手でさ、部屋に引きこもってゲームばっかやっててさ。そんな俺を見兼ねたのか、ある日突然ミサキに家から連れ出されて……何をするのかと思えば、こうやってみんなで野球をやれって言うんだ」


グラウンドを流れるぬるい風の音と、子どもたちの弾けた声が、どこか遠くの出来事のように耳の奥を通り抜けていく。

あぁ――……。
胸の奥が、冷たい刃物でえぐられたみたいにじんじんと痛んだ。

どうして?
私をわざわざここに呼び出したのは、私にその話を聞かせるためだったの?

『俺の好きなやつは、ミサキだけなんだ』って、そう言いたかったの?

そんなこと、面と向かって改めて教えられなくたって、とっくの昔から痛いくらい理解しているのに。

公園の強い陽射しを浴びながら、公平の横顔を盗み見る。
きっと今、彼の頭の中を占めているのは私ではなく、その名前の彼女なのだろう。

私にだって、見せてよ……。

ミサキという存在に向ける、その温かくて、愛おしそうで、すべてを包み込むような優しい微笑み。

どうしてミサキだけなの。
どうしてミサキばかりが、公平の「一番」を独占しているの。

ずるいよ……。
あまりにもずるすぎる。

私だって、公平の一番になりたい……。
公平の頭の中、私だって、独占してみたい……。

手の中のボールにしがみつく指先に、爪が白くなるほど力を込めた。
手のひらに刺さる土の感触と痛みが、惨めで嫉妬に狂いそうな本当の気持ちを、どうにか押し殺してくれていた。