全てがキミだった


微かな振動が、手のひらを刺激した。

ソファーに深く座り、ぼんやりと天井を眺めていた意識を引き戻す。
テーブルの上に置いたスマホを取り上げると、画面中央に見慣れた緑色の通知アイコンが表示されていた。

画面をタップしてアプリを開く。
トークルームの最上部に躍り出たメッセージには、色鮮やかな動くスタンプと、煌びやかな絵文字で飾られた文字が躍っていた。

『3―5同窓会決定~!』

「1月10日、3年5組の同窓会やるよ〜!全員絶対集合ね!絶対にだよ!
場所は東高校のグラウンド。
あの大きな木の下で待ち合わせ。
昔埋めたタイムカプセル、ついに掘り起こしちゃいます!
昼の13時集合!来られる人は、今すぐこのグループにスタンプかメッセージで返信してね!」

賑やかなアニメーションスタンプが画面の端で何度も跳ね、カラフルな絵文字が小さな画面の中で忙しなく光を放っている。
連打されたスタンプの文字が、どこか押しつけがましくも懐かしさが溢れた。

蒸し暑さが部屋の空気を重く沈ませる夏の日。
半年も先に執り行われるという同窓会の知らせが、SNSのグループラインを通じて、旧友から届いたのだった。

スマホの画面を伏せ、再びソファーに背中を預ける。
レースのカーテンの隙間から、どこまでも高い夏空を見上げた。
強い陽射しが雲の端を白く焼き切り、蝉時雨の遠い声が耳の奥に残響として残る。

同窓会、か。

空に溶けていく視線をゆっくりと手元へ戻した。

一瞬の躊躇のあと、サイドボタンを押し、光の灯っていた画面を落とす。
黒くなった画面には、ただ自分のぼんやりとした影だけが映り込んでいた。

行かないよな――。
ううん、行けないよな。

あいつ、来るのかな。
……いや、来ないな。きっと。

向こうだって、来られるはずがないんだから。