壺 あるいは魔法のランプでも


 うっかりしていた。
 いつ目を開けていいのか聞かなかった。
 だから――、というより僕は、不安になって薄目を開けてしまったんだ。


「願いを叶えてあげる、なんて言ってないけど」
 彼女の、小ばかにするような声が聞こえるのに、その彼女の顔は見えない。
 僕の目に映ったのは――
 ――大きな、……たまげるほど大きな、口。

 赤く分厚い口唇、並んだ鋭い歯、粘つく液に濡れた舌。
 そして、それは一瞬。

 ――ベチャッ、バクンッ。


「たしかに聞かせてもらったわ、あなたの願い」
 僕は闇の中で、彼女の声と何かを齧るような音を聞いた。
「ご馳走……じゃなかったけど、まあそれなりにいただいたことだし、とりあえず、ごちそうさま」