城の中は、外から見たときよりずっと広かった。
白い壁。
青いカーペット。
そして、天井には無数の星が浮かんでいる。
「……本当にお城の中みたい」
「イマヂネリだからね」
「そういう問題かな?」
私は笑った。
けれど、シュウちゃんは少しだけ真剣な顔をしている。
「どうしたの?」
「さっきのカード」
「第一のジュエルは『思い出』の中にあるってやつ?」
「うん」
シュウちゃんはカードを見つめた。
「ここには、僕たちが知らない何かがある」
「何か?」
「たぶん、僕たち自身のこと」
その言葉を聞いた瞬間。
廊下の奥から、音楽が聞こえてきた。
ピアノの音。
とても優しいメロディー。
「……この曲」
私は立ち止まった。
「知ってる?」
「うん……」
胸の奥が、少しだけ痛くなる。
どこかで聴いたことがある。
でも、いつだったのか思い出せない。
「行ってみよう」
シュウちゃんと一緒に、音のする方へ向かう。
そこには、小さな部屋があった。
中央に古いピアノが置かれている。
そして、その隣には一輪の青い薔薇。
「これ……?」
私は薔薇に近づいた。
花びらの中心に、小さな青い宝石が埋め込まれている。
「ジュエルだ!」
手を伸ばす。
その瞬間――。
視界が真っ白になった。
「きゃっ!」
気がつくと、そこは知らない場所だった。
いや。
正確には――。
知っている。
幼い頃の私。
そして、その隣にいる男の子。
「……シュウちゃん?」
目の前の男の子は、今よりずっと小さい。
私も小さい。
二人で公園にいる。
桜が咲いていた。
「これ……私たち?」
「たぶん」
シュウちゃんの声が、すぐ隣から聞こえる。
「でも、僕は覚えてない」
「私も……」
幼い私は、何かを大事そうに握っている。
青い小さな石。
「何それ?」
幼いシュウちゃんが尋ねる。
「宝物!」
幼い私は笑った。
「いつか、大切な人にあげるの!」
「大切な人って誰?」
「まだ秘密!」
そこで映像が止まった。
私は言葉を失った。
「……これ、私?」
「うん」
「私、こんなこと言ってたんだ」
「僕も知らなかった」
シュウちゃんが苦笑する。
すると、幼い私の手にあった青い石が光り始めた。
光は空へ昇り、現在の私たちの前に一つの文字を作った。
――大切な人とは、誰ですか?
「え……」
私は固まった。
「結」
「な、なに?」
「答えないと先に進めないみたい」
「そんなの急に言われても……」
私は困った。
大切な人。
そんなの――。
「家族とか?」
「違うみたい」
文字が赤く光った。
――NO.
「違うの?」
シュウちゃんが笑う。
「じゃあ、友達?」
私は答える。
「シュウちゃん……とか?」
文字が一瞬だけ青く光った。
でも――。
――NOT YET.
「えっ?」
私は思わずシュウちゃんを見る。
「NOT YETって……」
「まだ、ってことだね」
「じゃあ、どういうこと?」
シュウちゃんは答えなかった。
代わりに、目の前の映像が再び動き始めた。
幼い私が、青い石を空へ投げる。
すると、それが一輪の薔薇に変わった。
「……青い薔薇」
薔薇はゆっくりと開いていく。
その中心から、一つのジュエルが現れた。
そして、そのジュエルが私の手の中へ落ちてくる。
「取れた……」
青い光が、手のひらの上で輝いている。
第一のジュエル。
だけど。
私は嬉しいだけではなかった。
「シュウちゃん」
「うん?」
「私たちって……昔から知り合いだったの?」
「そうみたいだね」
「でも、私……全然覚えてない」
「僕も」
しばらく二人とも黙った。
すると、部屋の壁に新しい文字が浮かび上がった。
――第一のジュエル、獲得。
――残り二つ。
さらに、その下に別の文章。
――次の場所へ。
床が青く光った。
光の先には、一枚の扉。
扉には、大きな青い薔薇の紋章が描かれている。
「行こうか」
シュウちゃんが言った。
「うん」
扉へ向かおうとした、そのとき。
私は振り返った。
さっきまでそこにあったピアノが消えている。
代わりに、机の上に小さな箱が置かれていた。
「これ……」
私は箱を開ける。
中には、一枚の写真。
幼い私とシュウちゃんが写っている。
そして写真の裏には、手書きの文字があった。
『いつか、本当のデートをしようね』
「……!」
私は思わず写真を胸に抱えた。
「結?」
「……なんでもない」
私は写真をポケットにしまった。
シュウちゃんは不思議そうな顔をしていたけれど、それ以上は聞かなかった。
そして二人で扉を開く。
その向こうから、眩しい光が差し込んでくる。
次に現れた世界は――。
今までの青い街とは違っていた。
空いっぱいに花火が上がっている。
音楽が流れている。
そして遠くには、大きな観覧車。
「わあ……!」
私は思わず声を上げた。
「結」
「なに?」
「ここ、遊園地みたいだね」
「うん!」
シュウちゃんが笑う。
「じゃあ、次のジュエルを探しながら――」
少し間を置いて。
「デート、してみる?」
「……え?」
心臓が、跳ねた。
「さっきの写真」
シュウちゃんが言った。
「本当のデートをしようって書いてあったから」
「……」
私は顔が熱くなるのを感じた。
「……うん」
小さな声で答える。
「じゃあ……してみようかな」
その瞬間。
夜空に青い薔薇の花火が咲いた。
まるで、この世界そのものが――。
二人の約束を聞いていたかのように。
白い壁。
青いカーペット。
そして、天井には無数の星が浮かんでいる。
「……本当にお城の中みたい」
「イマヂネリだからね」
「そういう問題かな?」
私は笑った。
けれど、シュウちゃんは少しだけ真剣な顔をしている。
「どうしたの?」
「さっきのカード」
「第一のジュエルは『思い出』の中にあるってやつ?」
「うん」
シュウちゃんはカードを見つめた。
「ここには、僕たちが知らない何かがある」
「何か?」
「たぶん、僕たち自身のこと」
その言葉を聞いた瞬間。
廊下の奥から、音楽が聞こえてきた。
ピアノの音。
とても優しいメロディー。
「……この曲」
私は立ち止まった。
「知ってる?」
「うん……」
胸の奥が、少しだけ痛くなる。
どこかで聴いたことがある。
でも、いつだったのか思い出せない。
「行ってみよう」
シュウちゃんと一緒に、音のする方へ向かう。
そこには、小さな部屋があった。
中央に古いピアノが置かれている。
そして、その隣には一輪の青い薔薇。
「これ……?」
私は薔薇に近づいた。
花びらの中心に、小さな青い宝石が埋め込まれている。
「ジュエルだ!」
手を伸ばす。
その瞬間――。
視界が真っ白になった。
「きゃっ!」
気がつくと、そこは知らない場所だった。
いや。
正確には――。
知っている。
幼い頃の私。
そして、その隣にいる男の子。
「……シュウちゃん?」
目の前の男の子は、今よりずっと小さい。
私も小さい。
二人で公園にいる。
桜が咲いていた。
「これ……私たち?」
「たぶん」
シュウちゃんの声が、すぐ隣から聞こえる。
「でも、僕は覚えてない」
「私も……」
幼い私は、何かを大事そうに握っている。
青い小さな石。
「何それ?」
幼いシュウちゃんが尋ねる。
「宝物!」
幼い私は笑った。
「いつか、大切な人にあげるの!」
「大切な人って誰?」
「まだ秘密!」
そこで映像が止まった。
私は言葉を失った。
「……これ、私?」
「うん」
「私、こんなこと言ってたんだ」
「僕も知らなかった」
シュウちゃんが苦笑する。
すると、幼い私の手にあった青い石が光り始めた。
光は空へ昇り、現在の私たちの前に一つの文字を作った。
――大切な人とは、誰ですか?
「え……」
私は固まった。
「結」
「な、なに?」
「答えないと先に進めないみたい」
「そんなの急に言われても……」
私は困った。
大切な人。
そんなの――。
「家族とか?」
「違うみたい」
文字が赤く光った。
――NO.
「違うの?」
シュウちゃんが笑う。
「じゃあ、友達?」
私は答える。
「シュウちゃん……とか?」
文字が一瞬だけ青く光った。
でも――。
――NOT YET.
「えっ?」
私は思わずシュウちゃんを見る。
「NOT YETって……」
「まだ、ってことだね」
「じゃあ、どういうこと?」
シュウちゃんは答えなかった。
代わりに、目の前の映像が再び動き始めた。
幼い私が、青い石を空へ投げる。
すると、それが一輪の薔薇に変わった。
「……青い薔薇」
薔薇はゆっくりと開いていく。
その中心から、一つのジュエルが現れた。
そして、そのジュエルが私の手の中へ落ちてくる。
「取れた……」
青い光が、手のひらの上で輝いている。
第一のジュエル。
だけど。
私は嬉しいだけではなかった。
「シュウちゃん」
「うん?」
「私たちって……昔から知り合いだったの?」
「そうみたいだね」
「でも、私……全然覚えてない」
「僕も」
しばらく二人とも黙った。
すると、部屋の壁に新しい文字が浮かび上がった。
――第一のジュエル、獲得。
――残り二つ。
さらに、その下に別の文章。
――次の場所へ。
床が青く光った。
光の先には、一枚の扉。
扉には、大きな青い薔薇の紋章が描かれている。
「行こうか」
シュウちゃんが言った。
「うん」
扉へ向かおうとした、そのとき。
私は振り返った。
さっきまでそこにあったピアノが消えている。
代わりに、机の上に小さな箱が置かれていた。
「これ……」
私は箱を開ける。
中には、一枚の写真。
幼い私とシュウちゃんが写っている。
そして写真の裏には、手書きの文字があった。
『いつか、本当のデートをしようね』
「……!」
私は思わず写真を胸に抱えた。
「結?」
「……なんでもない」
私は写真をポケットにしまった。
シュウちゃんは不思議そうな顔をしていたけれど、それ以上は聞かなかった。
そして二人で扉を開く。
その向こうから、眩しい光が差し込んでくる。
次に現れた世界は――。
今までの青い街とは違っていた。
空いっぱいに花火が上がっている。
音楽が流れている。
そして遠くには、大きな観覧車。
「わあ……!」
私は思わず声を上げた。
「結」
「なに?」
「ここ、遊園地みたいだね」
「うん!」
シュウちゃんが笑う。
「じゃあ、次のジュエルを探しながら――」
少し間を置いて。
「デート、してみる?」
「……え?」
心臓が、跳ねた。
「さっきの写真」
シュウちゃんが言った。
「本当のデートをしようって書いてあったから」
「……」
私は顔が熱くなるのを感じた。
「……うん」
小さな声で答える。
「じゃあ……してみようかな」
その瞬間。
夜空に青い薔薇の花火が咲いた。
まるで、この世界そのものが――。
二人の約束を聞いていたかのように。
