群青イマヂネリ〜バーチャル・イクスペリエンス〜

あの日から、少しだけ時間が経った。

「ただいまー!」

玄関から、元気な声が響く。

帰ってきたのは、双子ちゃんだった。

「おかえり」

心咲は笑いながら二人を迎える。

あの不思議な世界で見たものは、全部夢だったのかもしれない。

けれど――。

夢の中で叶えたはずの願いは、少しずつ現実になっていた。

机の上には、一冊の雑誌。

表紙には、大きくこう書かれている。

『夢を叶えた新人クリエイター特集』

そして、その中に――。

【作家・声優 萌木結】

「……私だ」

心咲は、少し照れながらページをめくった。

その隣には、もう一冊。

今度は映画雑誌だった。

表紙を飾っているのは――日守莉人。

「莉人くん、すごいね」

「心咲だって同じだろ」

莉人は笑う。

そして、その雑誌の横には、一冊の小説。

帯には、大きな文字が躍っていた。

『祝・アニメ化決定!』

「……え?」

心咲は思わず本を手に取った。

さらに、その下には――。

【アニメ版キャスト】

主人公 萌木結――萌木結

「えっ……」

心咲の目が大きくなる。

「これ……私?」

「そうみたいだな」

莉人が笑う。

「作家として書いた物語を、自分の声で演じるんだろ?」

心咲は、しばらく何も言えなかった。

作家になりたい。

声優になりたい。

そして――大切な人と未来を歩きたい。

あの日、青い薔薇の世界で願ったこと。

三つの夢。

それが今、ひとつずつ現実になっている。

窓から、青い光が差し込んだ。

ふわり。

机の上に、青い薔薇の花びらが一枚落ちる。

心咲は、それをそっと拾った。

「……夢って、終わらないんだね」

「うん」

莉人が答える。

「叶ったら、次の夢が始まるんだと思う」

心咲は笑った。

そして、ペンを手に取る。

新しい物語を書くために。

新しい役を演じるために。

そして――これからの未来を歩いていくために。

ペンネームは、もちろん。

――萌木結。

それは、夢の中だけの名前じゃない。

萌守心咲という少女が、自分自身で選んだもう一つの名前。

二つの名前。

二つの夢。

そして、その先に続いていく未来。

青い薔薇の花びらが、もう一度だけ舞った。

これは、萌守心咲。

そして、萌木結の。

三つの夢が叶った、その先から始まる物語。

――夢の続きを、どうぞ。