目を覚ますと、私はホテルのベッドにいた。
「……あれ?」
窓の外を見る。
朝だった。
昨日までいたブルー・ドリーム・リゾートは、どこにもない。
普通の街。
普通の空。
普通の朝。
「夢……だったのかな」
私はベッドから起き上がった。
すると、枕元に小さな箱が置かれていた。
「これ……」
昨日、シュウちゃんからもらった箱。
恐る恐る蓋を開ける。
中には、あのガラスのティアラが入っていた。
「夢じゃない……」
私はティアラを手に取った。
透明なガラス。
中央には、小さな青い薔薇。
光に当てると、青い光が部屋いっぱいに広がった。
その瞬間。
ティアラの中から声が聞こえた。
『おはよう、結』
「……え?」
私は驚いてティアラを落としそうになった。
『昨日は楽しかった?』
「シュウちゃん?」
『違うよ』
声はシュウちゃんではなかった。
もっと小さな声。
子どものような声だった。
『これは、君自身の声』
「私の……?」
『そう』
ティアラが淡く光る。
『忘れている記憶は、まだたくさんあるよ』
「どうして?」
『それは――』
声が途切れた。
「待って!」
私はティアラを握りしめた。
しかし、もう何も聞こえない。
「……何だったんだろう」
そのとき。
スマートフォンが鳴った。
画面を見る。
シュウちゃんからだった。
『起きた?』
私はすぐに返信した。
『起きたよ。昨日のこと覚えてる?』
しばらくして返事が来た。
『もちろん』
そして。
『今日も会える?』
私は少しだけ笑った。
『うん』
――それから数分後。
私は再びイマヂネリへログインした。
目の前にシュウちゃんが立っている。
「おはよう」
「おはよう、結」
「昨日のこと……」
「覚えてるよ」
シュウちゃんは私の頭を見る。
「そのティアラも」
「うん」
私はティアラを見せた。
「昨日、声が聞こえたの」
「声?」
「私の声」
「……」
シュウちゃんの表情が変わった。
「何か言ってた?」
「忘れている記憶があるって」
「やっぱり……」
「やっぱり?」
シュウちゃんは答えなかった。
「シュウちゃん?」
「結」
「なに?」
「僕にも、昨日から変な記憶がある」
「え?」
シュウちゃんは自分の胸元を指差した。
「ここに、知らないはずの記憶があるんだ」
「どんな?」
「君と一緒に、青い薔薇を見ている記憶」
「……私と?」
「うん」
シュウちゃんは目を閉じた。
「でも、それがいつの記憶なのか分からない」
私は何も言えなかった。
そのとき。
空に大きな画面が現れた。
――第三のジュエルを探してください。
「始まった……」
画面には、一枚の写真が映し出される。
そこには――。
私とシュウちゃん。
そして、もう一人の人物。
「……誰?」
私は目を凝らした。
写真の人物は、顔が黒く塗りつぶされている。
ただ、その手にだけ――。
一輪の青い薔薇が握られていた。
――最後のジュエルを持つ者。
――その人物を探してください。
画面が消える。
「探すって……」
「この人、知ってる?」
シュウちゃんが聞く。
「分からない」
「僕も」
すると、ティアラが突然光った。
「え?」
青い薔薇の部分から、一筋の光が伸びる。
その光が、空中に地図を描いた。
地図の中央には、一本の線路。
その先に――。
『REAL WORLD』
と書かれている。
「リアル・ワールド……」
私は呟いた。
シュウちゃんが黙り込む。
「どうしたの?」
「ここから先は……」
「うん?」
「イマヂネリの中だけじゃないみたいだ」
「どういうこと?」
シュウちゃんは地図を見つめた。
「現実世界と、イマヂネリがつながってる」
私は背筋が寒くなった。
「じゃあ……」
「うん」
「私たちが今まで見てきたものも……」
「現実に存在する何かを、イマヂネリが映してる可能性がある」
その瞬間。
地面が大きく揺れた。
「きゃっ!」
私はよろめいた。
シュウちゃんが私の腕を掴む。
「結!」
空が割れた。
青い世界の向こう側から――。
現実の街が見える。
車。
ビル。
人。
そして。
私たちがいる場所と同じように、青い薔薇のマークが描かれた建物。
「……あれ」
私は言葉を失った。
「現実にある」
「うん」
シュウちゃんも驚いている。
すると、建物の屋上に一人の人物が現れた。
顔は見えない。
けれど。
手には、青い薔薇。
「最後のジュエル……?」
その人物がこちらを見る。
そして、口元だけが笑った。
『やっと、ここまで来たね』
「誰なの?」
私が叫ぶ。
返事はない。
代わりに、ティアラが強く光った。
そして――。
『あなたたちが忘れた約束を、思い出してください』
声が響いた。
世界が真っ白になる。
気がつくと、私はシュウちゃんと二人で、見知らぬ駅のホームに立っていた。
看板には――。
『群青駅』
と書かれている。
「……群青駅?」
シュウちゃんが呟いた。
目の前に、一台の列車が入ってくる。
車体は、どこまでも深い青。
そして先頭には――。
一輪の青い薔薇。
扉が開く。
車内から、機械の声が聞こえた。
『終点――リアル・ワールド』
私はシュウちゃんを見る。
「行く?」
シュウちゃんが手を差し出した。
「行こう」
私はその手を握った。
そして二人で、青い列車へ乗り込んだ。
扉が閉まる。
列車が動き出す。
その瞬間。
私の手の中のガラスのティアラが、三度光った。
まるで――。
これから始まる最後の旅を、祝福するように。
「……あれ?」
窓の外を見る。
朝だった。
昨日までいたブルー・ドリーム・リゾートは、どこにもない。
普通の街。
普通の空。
普通の朝。
「夢……だったのかな」
私はベッドから起き上がった。
すると、枕元に小さな箱が置かれていた。
「これ……」
昨日、シュウちゃんからもらった箱。
恐る恐る蓋を開ける。
中には、あのガラスのティアラが入っていた。
「夢じゃない……」
私はティアラを手に取った。
透明なガラス。
中央には、小さな青い薔薇。
光に当てると、青い光が部屋いっぱいに広がった。
その瞬間。
ティアラの中から声が聞こえた。
『おはよう、結』
「……え?」
私は驚いてティアラを落としそうになった。
『昨日は楽しかった?』
「シュウちゃん?」
『違うよ』
声はシュウちゃんではなかった。
もっと小さな声。
子どものような声だった。
『これは、君自身の声』
「私の……?」
『そう』
ティアラが淡く光る。
『忘れている記憶は、まだたくさんあるよ』
「どうして?」
『それは――』
声が途切れた。
「待って!」
私はティアラを握りしめた。
しかし、もう何も聞こえない。
「……何だったんだろう」
そのとき。
スマートフォンが鳴った。
画面を見る。
シュウちゃんからだった。
『起きた?』
私はすぐに返信した。
『起きたよ。昨日のこと覚えてる?』
しばらくして返事が来た。
『もちろん』
そして。
『今日も会える?』
私は少しだけ笑った。
『うん』
――それから数分後。
私は再びイマヂネリへログインした。
目の前にシュウちゃんが立っている。
「おはよう」
「おはよう、結」
「昨日のこと……」
「覚えてるよ」
シュウちゃんは私の頭を見る。
「そのティアラも」
「うん」
私はティアラを見せた。
「昨日、声が聞こえたの」
「声?」
「私の声」
「……」
シュウちゃんの表情が変わった。
「何か言ってた?」
「忘れている記憶があるって」
「やっぱり……」
「やっぱり?」
シュウちゃんは答えなかった。
「シュウちゃん?」
「結」
「なに?」
「僕にも、昨日から変な記憶がある」
「え?」
シュウちゃんは自分の胸元を指差した。
「ここに、知らないはずの記憶があるんだ」
「どんな?」
「君と一緒に、青い薔薇を見ている記憶」
「……私と?」
「うん」
シュウちゃんは目を閉じた。
「でも、それがいつの記憶なのか分からない」
私は何も言えなかった。
そのとき。
空に大きな画面が現れた。
――第三のジュエルを探してください。
「始まった……」
画面には、一枚の写真が映し出される。
そこには――。
私とシュウちゃん。
そして、もう一人の人物。
「……誰?」
私は目を凝らした。
写真の人物は、顔が黒く塗りつぶされている。
ただ、その手にだけ――。
一輪の青い薔薇が握られていた。
――最後のジュエルを持つ者。
――その人物を探してください。
画面が消える。
「探すって……」
「この人、知ってる?」
シュウちゃんが聞く。
「分からない」
「僕も」
すると、ティアラが突然光った。
「え?」
青い薔薇の部分から、一筋の光が伸びる。
その光が、空中に地図を描いた。
地図の中央には、一本の線路。
その先に――。
『REAL WORLD』
と書かれている。
「リアル・ワールド……」
私は呟いた。
シュウちゃんが黙り込む。
「どうしたの?」
「ここから先は……」
「うん?」
「イマヂネリの中だけじゃないみたいだ」
「どういうこと?」
シュウちゃんは地図を見つめた。
「現実世界と、イマヂネリがつながってる」
私は背筋が寒くなった。
「じゃあ……」
「うん」
「私たちが今まで見てきたものも……」
「現実に存在する何かを、イマヂネリが映してる可能性がある」
その瞬間。
地面が大きく揺れた。
「きゃっ!」
私はよろめいた。
シュウちゃんが私の腕を掴む。
「結!」
空が割れた。
青い世界の向こう側から――。
現実の街が見える。
車。
ビル。
人。
そして。
私たちがいる場所と同じように、青い薔薇のマークが描かれた建物。
「……あれ」
私は言葉を失った。
「現実にある」
「うん」
シュウちゃんも驚いている。
すると、建物の屋上に一人の人物が現れた。
顔は見えない。
けれど。
手には、青い薔薇。
「最後のジュエル……?」
その人物がこちらを見る。
そして、口元だけが笑った。
『やっと、ここまで来たね』
「誰なの?」
私が叫ぶ。
返事はない。
代わりに、ティアラが強く光った。
そして――。
『あなたたちが忘れた約束を、思い出してください』
声が響いた。
世界が真っ白になる。
気がつくと、私はシュウちゃんと二人で、見知らぬ駅のホームに立っていた。
看板には――。
『群青駅』
と書かれている。
「……群青駅?」
シュウちゃんが呟いた。
目の前に、一台の列車が入ってくる。
車体は、どこまでも深い青。
そして先頭には――。
一輪の青い薔薇。
扉が開く。
車内から、機械の声が聞こえた。
『終点――リアル・ワールド』
私はシュウちゃんを見る。
「行く?」
シュウちゃんが手を差し出した。
「行こう」
私はその手を握った。
そして二人で、青い列車へ乗り込んだ。
扉が閉まる。
列車が動き出す。
その瞬間。
私の手の中のガラスのティアラが、三度光った。
まるで――。
これから始まる最後の旅を、祝福するように。
