北の暁



「ん……?」
 赤と黄金を基調とした寝殿の豪奢な寝台の上で、何人もの妖艶な側室たちに囲まれていた朱雀の皇子・煉(れん)は、不意に北を見据えて目を細めた。
赤い髪に琥珀色の瞳。その端正な顔に残忍な笑みが浮かぶ。
解き放たれたその僅かな波動は、遥か遠く、南を司る第一皇子、朱雀の宮の住まいである南の御殿まで届いていたのだ。
「どうされましたか? 煉さま?」
 薄い絹の衣をまとった側室の一人が、不思議そうに言いながら煉の胸元に擦り寄る。
煉は彼女の顎を指先で乱暴にすくい上げ、愉しげに呟いた。
「現れたか。落ちこぼれの玄武の元に、本物の巫女が……」