北の暁


 豪華な朱塗りの扉を蹴り開けた先。そこに待っていたのは、他ならぬ煉だった。
「ずいぶんと暴れてくれたな、暁よ」
 赤い甲冑を着て、気怠そうに胡座を描いている。
「小夜はどこだ⁉︎」
「はて、小夜?」
「とぼけるな!」
「……あぁ、あの朱雀の巫女のことか」
 狂気じみた笑みを浮かべて暁を見据える。
「朱雀だと? ふざけるな‼︎」
 激しい怒りとともに、暁の周囲に巨大な水の渦が現れる。
「おお怖い。僕にそんな子供騙しの術など効かないよ」
 煉が両手を突き出すと、寝殿の床から天を突くような紅蓮の炎が噴き上がった。凄まじい熱風が部屋のすべてを焼き、空気を歪ませる。
暁は一歩も引かず、巨大な水の防壁を展開し身を守った。
激しい水と火が正面からぶつかり合うと瞬時に爆ぜ、水蒸気が部屋を覆い尽くす。
「死ね、暁――‼︎」
 視界が白く染まった一瞬の隙を突き、煉が鋭い槍で襲いかかってくる。
暁が抜いた太刀と煉の炎の剣が激しく火花を散らす。激しい金属音が鳴り響き、肉弾戦へと傾れ込んだ。
 戦いはほぼ互角だった。けれど、日頃の鍛錬の成果が勝敗を分けた。
暁は満身創痍になりながらも、最後の力を振り絞り、一撃で煉の喉元に刃を突き付ける。
「もう一度聞く、小夜はどこだ」
「……ろ、廊下の突き当たりに隠し扉がある。巫女はそこに閉じ込めてあ……る」
 ガクリ、と煉は膝をつく。暁の勝利が確定した瞬間だった。
もう追っては来られないだろう。
瀕死の煉は息も絶え絶えと言った様子だ。それは暁も同様だった。ボロボロの身体を引きずりながら、暁は寝殿のさらに奥にある隠し部屋の扉をこじ開けた。