「――進軍せよ! 朱雀を根こそぎ叩き潰すぞ!」
暁の号令と共に、玄武の兵士たちが動き出した。黒い馬に乗った暁は先陣を切って突き進んでいく。
その背後を北辰と黒曜が固め、襲いかかる敵の兵士たちを容赦なくなぎ倒していく。
しかし、朱雀の兵たちも死に物狂いで暁の行く手を阻む。
多勢に無勢、いかに玄武宮が精鋭といえど、敵陣の最奥へ進むにつれて激しい抵抗に遭い、徐々に勢いが落ちていく。
「チッ、次から次へと湧いてきやがる!」
黒曜が刃を振るいながら毒づいた、その時だった。
地響きと共に、東の空から凄まじい雷鳴が轟いた。突如として現れたのは、青い甲冑を纏った軍勢。
第二皇子、の宮・藍の兵たちだった。
驚愕して動きを止める朱雀の兵たちを、青龍の軍勢が一瞬にして蹴散らしていく。
「大変です殿下! 青龍の軍勢が攻めてきました」
慌てた北辰が叫ぶ。
「仕方ない、迎え撃て!」
その先頭に立つ藍が、不敵な笑みを浮かべて暁を見据えた。
「勘違いするな、暁。俺も煉の傍若無人な態度には腹が立っていたのだよ。同じ皇族として、奴の醜態は見ていられん。奴は麒麟に相応しくない」
青龍の皇子は刀を鞘に収めると、暁の肩を強く叩いた。
「お前は大切な女を取り戻すのだろう? 」
(ーー大切な女。その通りだ。"巫女"としではなく、小夜を愛している)
暁は大きく頷く。藍は弟の決意を讃えるかのように微笑む。
「ここは我が青龍の軍勢が引き受けた。先に行け、暁!」
「……恩に切ります、兄上」
暁はただ一人、小夜を探して最奥の寝殿へと突き進んだ。

