一方。椿が放った伝令に従い闘技場付近に陣営を構えた暁たちは、命懸けで脱出した椿を無事保護していた。
「私などが逃げ戻ってきてしまい申し訳ございませんでした」
悔しさに唇を噛み締める椿の前に、暁は静かに歩み寄り、その肩にそっと手を置いた。
「椿、お前が無事でよかった」
「殿下……」
「あまり自分を責めるな。その悔しさはこれからの戦いに取っておけ」
暁の声は酷く穏やかだった。だが、その瞳の奥には漆黒の怒りが渦巻いている。
「小夜は、俺が必ず取り戻す。兄上とて容赦はせん」
暁の怒りが周囲の空気を一瞬にして凍りつかせた。百戦錬磨の北辰でさえ背筋を凍らせるほど。
「御意。 朱雀の奴ら、調子に乗りおって。我が玄武の真の力を、その骨の髄まで叩き込んでやります!」
拳を激しく打ち鳴らす北辰。その隣で、黒曜もまた、湧き上がる怒りを抑えられずにいた。
「小夜様を奪い、椿を傷つけた代償、朱雀の宮を根こそぎ叩き潰して支払わせましょう。殿下、突入の命を‼︎」
「――行くぞ! この命に変えても、小夜を奪い返す」
暁の一言と共に、黒い獣と化した玄武の精鋭たちによる小夜奪還作戦が始まった。

