北の暁


 この国は、五つの神の加護によって安寧秩序が保たれている。

東の青龍(せいりゅう)、南の朱雀(すざく)、西の白虎(びゃっこ)、北の玄武(げんぶ)。
そしてその中心で王座に君臨するのが、最高神『麒麟(きりん)』――すなわち、現在の皇帝である。

 次代の皇帝・麒麟の座に着く条件はただ一つだけ。
この国のどこかにいる『巫女』を見つけ出し、誰よりも早く婚姻を結ぶことである。
 巫女は四神の加護を持つ者へ絶対的な力を与え、同時に、国へ莫大な繁栄をもたらす存在。

 そして、まさにいま、四人の皇子たちの間で巫女を巡る静かな争奪戦が起きていた。
国中から年頃の美しい女を買い集める者、従者に探させる者、呪術を用いて召喚しようとする者。
けれど未だ巫女は見つからず、各々の後宮には、女人(にょにん)たちが溢れかえっていくばかり。

――ただひとり、第四皇子。玄武の宮(みや)・暁(あかつき)の後宮を除いては……。