あの光の先

ひとしきり涙を流し、彼女が落ち着いたことを見計らって話をしてみることにした。

『ねぇ、あなたのお名前は?』

「えっと…サラ…です」

『可愛いお名前ね』
『私の名前はヘンリエッタ・ジュスターヴ・アレサンドラ』
『実はこう見えて王女様なのよ』

スカートの端をもち、くるっと回ってみる。

「わぁ…本物の王女様?」
「とっても可愛い!」

サラは目を輝かせていた。
私は少し恥ずかしかったが、彼女が喜んでくれたので救われた気がした。

『あなたのお兄様はその…戦場で大けがをしてしまって…』

「大丈夫…だよ。いついなくなってもおかしくないって言ってた」

『そう…守ってあげられなくてごめんなさい…』

「んーん、もしものときのために私をここに匿ってもらってたから…大丈夫だよ」

『そうだったのね…』
『あ…そうだわ!これを渡してほしいって』

そう言ってあの金貨袋をサラに渡す。

『これで2人分の亡命ができるそうよ』
『ここから出られるのよ!』

「お兄が言ってたやつ…やっと溜まったのに…ぅぅぅ…」

何かを思い出して、また涙が溢れだしていた。
仕方ないのだ。
彼女はまだ幼い。
唯一の肉親を失ったのだ。
本当はとても心細いし、悲しいし、どうしたらいいのかわからないはずだ。

『これからは、私があなたを守るわ』

そう言ってサラを包み込むようにぎゅっと抱きしめ、彼女を安心させてあげた。
こんなことしかできないけれど、彼女が少しでも安心してくれれば…との思いで必死だった。

「お姉さん…ありがとぅ……」

そう言って彼女は泣いた。
涙は次から次へとあふれ出し、目を腫らし、声が掠れるまで泣き続けた。

『辛いわよね。お義母さん…にはなれないけど、お姉さんにはなってあげられるわ』
『大丈夫、大丈夫よ』

私は胸が抉られるほど辛かった。
サラはまだほんの12歳くらいの女の子なのだ。

『(こんな無慈悲で残酷な世界で一人ぼっちだなんて辛すぎるわ。)』
『(私が、私がなんとかしてあげなきゃ!)』

私はサラを「守る」という使命を背負うことにした。
それがきっと彼の願いでもある。
そう信じて。

『(私の泥をすするようなあの日々、ようやく今まで生きてきた意味が出てきたわ)』

私の瞳にはもはや絶望はなく、サラを守るという使命感の元、サンサンと輝いていた。