あの光の先

扉の中に入るとそこはどこまでも続く水路のようだった。
扉が閉まると再び「ゴゴゴゴ」という音と共に扉が隠された。
もう前に進むしかない。
サラもここから先は何も知らないらしく、未知の領域だ。
「危険があるかもしれない」とここからは私が前に出ることにした。
怖くないといえば嘘になる。
だけど、今は守るものがある。
守るもののためならば、私は勇気を振り絞れる。
その決意を胸にソロリソロリと薄暗い水路を進んでいく。


水路は一本道だったが、どこまでも続いていて、人の気配は全くない。
せいぜい時々出くわすネズミくらいであとは静寂が支配していた。

『ねぇ、サラ?怖くはないかしら?』
「だいじょうぶだよ、お姉ちゃん」

後ろにしがみつくサラは少し震えていた。
怖くないわけはない。
だから

『大丈夫よ。私がついているわ』

そう言って、手をギュッと握って安心させてあげた。
正直、私も怖い。
だけど、サラが一緒にいてくれるだけで勇気が出るのだ。
一人だと心細いけど、二人なら大丈夫。
その思いを胸に先を進む。

しばらく進むとひらけた場所に出た。
大きなトンネルがあり、そこには船頭らしき人間が座っていた。

『もし?ここでお支払いすればいいのかしら…?』

「なにが」とは言わない。
敵かもしれないから警戒はしつつ、聞いてみた。

男、というか老人は無言で頷く。
どうやらここでいいようだ。

金貨袋を渡すと、老人は中身を見て、目視で数え始め、頷き、目の前の船に案内した。
船というにはあまりにも小さく、嵐などがあったらすぐに転覆してしまいそうな小さな木製の船だった。

サラを抱きかかえ、船に乗り込むと老人も乗船し、ゆっくりと舟をこぎ始めた。
舟はぽっかりと空いたトンネルの方を進んでいった。

長い長いトンネルをようやく抜けるころ、老人が私たちに白い布切れを被せた。
きっと見つからないように、との配慮だろう。
視界も奪われ、船を漕ぐ「キィ、キィ」という音だけが鳴り響いた。


辺りは驚くほど静かで私たち以外誰もいないんじゃないかというくらい静寂だった。

何時間経っただろうか、老人が布切れをサッと剥いだ。
遠くの方に帝国の城がかろうじて見えた。
そして、私たちが進む方角には朝を告げる太陽が昇り始めていた。
陽光が水辺を照らし、とても美しく、しばらくサラと二人で見惚れていた。

『きれい……』
「うん、すごく」

まるで私たちの門出を祝うかのように日の光は昇り、辺りを明るく染めていく。
ようやく対岸も見えてきた。
これからの人生、何があるかわからない。
不安もあるが、楽しみもある。
今は隣にサラが、妹がいる。

『楽しみだなぁ…』

ぽつりと言葉が出る。

「うん。お姉ちゃんと一緒ならきっと楽しい!」

サラもつられて言葉を紡ぐ。





私たちの新しい旅はここから始まる。

二人の顔に不安はもうない。
あふれんばかりの満面の笑みだった。




あの光の先にはどんな冒険が待っているのだろうか。。