あなたが二期生として入社してきたのは、施設がオープンして一年が過ぎ、初期メンバーの半分以上が入れ替わった頃だった。
当時の私は、繰り返される重労働と、職場の異常な空気に毒され、心に厚いタールを塗ったような状態だった。誰が入ってきても、「どうせ数ヶ月でいなくなるのだろう」と、無意識に距離を置いていた。
けれど、あなたは違った。
初めてあなたと言葉を交わした日のことを覚えている。
それは、今思えばなんてことのない、ひどく退屈な午後の休憩時間だった。窓のないスタッフルームには、誰かが吸い残した煙草の匂いと、微かに油の回った換気扇の音が充満していた。
あなたは、コンビニで買ってきたらしい焼きそばを、少し急いだ様子で口に運んでいた。そして、ふと私と目が合うと、「お疲れ様です」と、あの、少しだけ語尾の跳ねる独特の口調で挨拶をした。
その時、あなたの前歯に、小さな緑色の破片がついていた。
本当に、ただの青のりだった。
けれど、その滑稽なまでの「日常」が、非日常的な空間にいた私には、とてつもなく尊いものに思えたのだ。この不潔な蒸気の王国の中に、まだ焼きそばの青のりを歯につけて笑うような、真っ当な人間が存在しているという事実。
「ついてますよ、そこに」
私が指を差すと、あなたは「えっ?」と目を丸くして、慌てて手鏡を取り出した。
「あ、本当だ。恥ずかしい……」
あなたは頬を染めて笑った。その笑い声は、それまで私が職場で耳にしてきた、誰かを貶めるための卑俗な笑いや、自分を守るための愛想笑いとは、全く違う響きを持っていた。
それは、外の世界の、汚れのない空気の色をしていた。
あなたは接客の際、驚くほど張りのある、遠くまで通る大きな声を出した。
けれど、二人きりで事務作業をしている時や、帰り際、三宮の駅へ向かう道すがらでは、少しおっとりとした、柔らかな声に変わった。
当時の私は、繰り返される重労働と、職場の異常な空気に毒され、心に厚いタールを塗ったような状態だった。誰が入ってきても、「どうせ数ヶ月でいなくなるのだろう」と、無意識に距離を置いていた。
けれど、あなたは違った。
初めてあなたと言葉を交わした日のことを覚えている。
それは、今思えばなんてことのない、ひどく退屈な午後の休憩時間だった。窓のないスタッフルームには、誰かが吸い残した煙草の匂いと、微かに油の回った換気扇の音が充満していた。
あなたは、コンビニで買ってきたらしい焼きそばを、少し急いだ様子で口に運んでいた。そして、ふと私と目が合うと、「お疲れ様です」と、あの、少しだけ語尾の跳ねる独特の口調で挨拶をした。
その時、あなたの前歯に、小さな緑色の破片がついていた。
本当に、ただの青のりだった。
けれど、その滑稽なまでの「日常」が、非日常的な空間にいた私には、とてつもなく尊いものに思えたのだ。この不潔な蒸気の王国の中に、まだ焼きそばの青のりを歯につけて笑うような、真っ当な人間が存在しているという事実。
「ついてますよ、そこに」
私が指を差すと、あなたは「えっ?」と目を丸くして、慌てて手鏡を取り出した。
「あ、本当だ。恥ずかしい……」
あなたは頬を染めて笑った。その笑い声は、それまで私が職場で耳にしてきた、誰かを貶めるための卑俗な笑いや、自分を守るための愛想笑いとは、全く違う響きを持っていた。
それは、外の世界の、汚れのない空気の色をしていた。
あなたは接客の際、驚くほど張りのある、遠くまで通る大きな声を出した。
けれど、二人きりで事務作業をしている時や、帰り際、三宮の駅へ向かう道すがらでは、少しおっとりとした、柔らかな声に変わった。

