∞8《インフィニティ・エイト》

 いつもと同じ朝。

 引っ越しさえなければ、明日も明後日もその先も、ここで二人と同じ景色を見ているはずだったのに。

 学校まで続く商店街は、古き良き町並みという言葉がピッタリの場所だ。

 昔ながらの惣菜店や金物屋、個人経営の服屋が軒を連ねる。

 店のカウンターに古めかしいラジカセが置かれていて、ローカルラジオのパーソナリティーがリスナーのメールを読み上げている。

 花壇にはひまわりが植えられていて、まっすぐ空を見上げて咲いている。

「私たち、はじめてのおつかいは、そこの精肉店でポテトサラダを買うことだったよね」

「あー、覚えてる覚えてる。夏美が通りかかる人全員に挨拶したあげく、ネコにまで挨拶するから、こんな近所の店で買い物するだけなのに一時間もかかってさ」

 文具店の入り口で寝ているネコのミーコ。 

 私がはじめてのおつかいをした日からここにいる。

 あの日子猫だったミーコは、今ではかなりのおばあちゃん猫だ。

 そっと手を伸ばしてミーコの頭をゆっくりと撫でる。

「ミーコ。今日もかわいいねぇ。これまでありがとうね。いつかまた会いに来るから、その時まで元気でいてね」

 ウトウトしていたミーコは私の方をちらりと見て、あくびをした。