∞8《インフィニティ・エイト》

「おそよう夏美。なんだその寝ぐせ!」

「うるさい」

 開口一番、リクがテンション高めに言う。

 明るくて元気だけど、一言二言多いのが玉にキズなんだよね。

 普通出会い頭で女の子にねぐせ指摘するかなー。

「髪くらいちゃんと直せよ。今日は最後の思い出作りなんだからさ!」

「別に誰に見られるわけでもないでしょ」

「俺たちに見られてるだろうが!」

「それがどうしたの」

 軽口を叩き合っていると、ソラがふっと微笑んだ。

「……今起きたばかりなんだ? お寝坊さんなのは夏美らしいよね」

「でしょ?」

「肯定するな!」

 リクがツッコミを入れる。
 いいじゃん? 私、昔っから早起き苦手だもん。

「外行くなら食べるもの買わないと。冷蔵庫ももうないからさ」

 急いで部屋に戻ってショルダーバッグを取った。
 玄関に走ってサンダルをはく。

 リクは満足そうに頷いて、私の腕を引いた。

「んじゃ、行くぞ! ついでに、夜は祭な!」

「はいはい」

 夏の朝の空気の中、リクが足取り軽やかに先を行く。

 セミの鳴き声、アスファルトから昇る蜃気楼(しんきろう)、生ぬるい風、やけつく太陽の光。

 雪国新潟といえど、夏はひたすら暑い。

 帽子をかぶればよかったなぁ。

 手をひさしにして見上げた空は青く澄み渡っていて、入道雲が浮かんでいる。

 空を遮るような大きな建物が学校くらいしかない田舎。