出張。私はそれをご馳走旅と読む。

「そうなんですね。じゃあ、名古屋メシは明日堪能しますね」
 気にしないでと手を振って休憩に行こうとした私を、別のスタッフが呼び止めた。
「あ、そうだ。それならスガキヤとかどうです?」
 聞き覚えのない名前に思わず首を傾げる。
「ラーメンなんですけど。たしか、東京には無いって聞いたことがあります」
 その言葉に、その場にいたスタッフたちが一斉に反応した。
「えっ」
「本当に?」
「東京ってないの?」
 どうやら地元民にとっては相当当たり前の存在らしい。
「私、ラーメン店には詳しくはないのですけど、そんなに有名なお店なんですか?」
 首を傾げる私に、周りのスタッフたちがうんうんと首を縦に振っている。
「子供の頃、買い物行くと絶対食べてました」
「わかるー」
 隣のスタッフも笑いながら頷く。
「部活帰りとかも行ったよね」
「懐かしい」
 まるで皆が同じ時間を共有していたような空気だ。
 その様子を見ていて、私はスガキヤという店に興味を惹かれた。
 食べ物そのものよりも、その店に対するスタッフたちの愛着のようなものが気になった。
「そんなに美味しいんですか?」
 私の素朴な質問に、スタッフたちは顔を見合わせる。
 そして。
「美味しいっていうか……」
「なんか落ち着く味?」
「帰ってきたなって感じがする」
 誰一人として明確な答えを言わなかった。
 でも、みんな少し嬉しそうだった。
 多分、それが答えなんだろう。
「そっか。じゃあせっかくだし、そこに行ってみようかな」
 スガキヤは、フードコートには当たり前のように入っている店らしい。
 私たちの店舗が入るショッピングモールにも当然のようにその店はあった。
 赤い看板に白い文字。
 平日の昼間だからか、店の前に人はいなかった。
 それでも、フードコートで食事をする人の中には、その店の器を手にしている人が何人かいた。
 買い物帰りらしき親子連れ。近くの職場から昼食にきたのだろうサラリーマン。年配の女性も食べている。
 やはり、地元では愛された店なのだろう。
 レジ前に立ち、掲示されたメニューを見る。
 驚くほど安かった。
 何とラーメン単品が、500円以下。東京なら、この値段ではまず食べられない。
 格安すぎる設定に驚きながら、せっかくなので定番らしいラーメンを注文した。
 豚骨をベースにしているのか、少し白濁としたスープ。そこに、チャーシュー、メンマ、ネギがトッピングされた、とてもシンプルなラーメン。
 派手さはない。
 けれど、一口啜った瞬間、思わず目を瞬いた。