好きが漏れしてる三隅先輩と、素直になれない柊君

BL

ちひろ/著
好きが漏れしてる三隅先輩と、素直になれない柊君
作品番号
1790707
最終更新
2026/08/31
総文字数
0
ページ数
0ページ
ステータス
未完結
いいね数
0
毎日18:30公開。
9/5(土)に完結予定です。

ゆるふわ先輩攻め×しっかり後輩受け

 先輩、好きがダダ漏れです。
 もちろん、口には出さない。

 人の本音が読めてしまう柊悠真は、人の頼みを断れない。十八年間、誰かの期待に応え続けてきた彼は、人間関係をリセットするつもりで東京から四国の山奥の大学へ来た。ところが入学初日、写真サークルの部長・三隅蓮に頭を下げられ、その計画はあっさり崩れる。

 三隅は学内の有名人だ。高一で大きな賞を獲った天才写真家で、顔がよくて、ファンもいる。けれど部室での彼は、財布を忘れ、平気で食事を抜き、僕の名前を呼ぶだけで噛む。甘いカフェオレしか飲まないくせに、なぜか毎週「間違えて買っちゃってさ」と、僕の好きなブラックコーヒーを差し出してくる。

 ――この人の好意は、どう考えても漏れている。

 気づかないふりを続ける僕には、もうひとつ気がかりがあった。三隅先輩は、あの賞を獲ったカメラで、一度もシャッターを切らない。毎週レンズだけを磨いている。SNSでバズる写真は、全部スマホで撮ったものだ。そのことに気づいているのは、たぶん僕だけだった。

「先輩って、そのカメラでは、撮らないんですか」
「――そのうち、ね」

 はぐらかされた、その日の夕方。先輩は二年ぶりにカメラを手に取って、思いがけないことを言った。
「……柊。撮って、いい? 夏祭りでお前を撮らせてよ」

 こうして始まった、火曜と金曜だけの撮影の夏。ファインダー越しの先輩は、いつもと違って、まっすぐ僕を見る。夕立の軒下、暗室の赤い光、現像液から浮かび上がる三十六枚の僕。近づくほどに、僕の心臓はうるさくなっていく。

 けれど、先輩には期限があった。内定の返事は、夏が終わるまで。返事をしたら、カメラを売るという。
 なんで、僕なんですか。なんで、写真をやめるんですか。
 訊いてはいけないと分かっていた質問を、僕は暗室で口にしてしまう。

 他人の本音は読めるのに、自分の胸の中身だけが読めない。
 夏祭りまで、あと何回。
 好きがダダ漏れの先輩と、隠すのが上手すぎる後輩の、ひと夏の話。

この作品の感想ノート

この作品には、まだ投稿されていません。

この作品のひとこと感想

この作品には、まだ投票されていません。

この作品をシェア

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

pagetop