負けヒーロー部。負けヒーローの俺でも勝ちヒーローになれますか

「ちょー疲れたー、お腹すいたしー。ねぇ、なににする? 僕、パンケーキがいいなー」
「先に飯からだろ」
「順番なんてどっちでもいいじゃん」
あの後、先生に押し付けられ、雑用を――ではなく、ボランティア部としての活動を終えた俺は優一と、先輩たちで駅前にあるファミレスにきていた。部活帰りなこともあって、店内には俺たちと同じ学生が多かった。長谷川先輩と姫宮先輩は、お互い言い合いながらも仲良くドリンクバーを取りに行った。
席は二人ずつ。俺の隣は優一だ。優一は当たり前のように、にこにこと口角を上げてこちらを見ている。
「……なんだよ」
「んー? 変わってないなーって」
「は? どこが」
「こことか――」
優一が手を伸ばして髪に触れようとする。俺は反射で目を瞑った。だが、すぐに先輩たちがドリンクバーから戻ってきて、優一の手が俺の髪に触れることはなかった。
長谷川先輩が手にしているのは、ホットのレモンティー。姫宮先輩は………姫宮先輩のドリンクは、なんだかすご色をしていた。恐る恐るなにが入っているのか聞くと、コーラとメロンソーダと、カルピスとなんかの新作を混ぜたものらしい。
それを隣で呆れた表情を浮かべて頭を抱えている長谷川先輩を見て、いつものことだと悟った。
隣で優一がメニューを差し出す。さっきのことなど気にも止めていないようだ。仕方なく俺も優一と一緒にメニューを覗き込む。
「これとか美味しそうだよ、真尋」
優一の目線の先は、トマト煮込みのハンバーグ。茜色のソースがたっぷりとお肉に絡められていて、とても美味しそうだ。付け合せは、野菜かポテトを選べるらしい。
「ハンバーグもいいけど……うどんにしようかな。夜にお肉を食べると胃に負担がかかるし」
「真尋、おじいちゃんみたい」
「健康志向だから!」
「今、食べたいのは?」
「お肉……」
「じゃあ後で運動しようよ」
(うーん、それなら…………)
少し迷ったが、最終的には欲に負けてトマト煮込みのハンバーグにした。付け合せは野菜。せめてもの抵抗だ。優一も俺と同じハンバーグ。付け合せは、ポテト。先輩たちは、チーズ入りのピザをLサイズで頼んで分け合うらしい。姫宮先輩はピザに追加で、パンケーキや期間限定のパフェも頼んでいた。


ほどなくして料理が運ばれたが、各々食べ方が違った。長谷川先輩はピザを普通に手で食べていたが、姫宮先輩はピザの上に、チョコソースやいちごのソースをかけてから口に運んでいた。パフェの生クリームをピザにのせたり、フルーツをトッピングしたり………そのたびに、長谷川先輩の眉間の皺が険しくなっていた。隣の優一は優雅にフォークとナイフでハンバーグを切り分けている。対して俺は箸。同じメニューなのに、優一のハンバーグの方が高級そうに見えた。
「ねぇ、駿ー、ピザもう一枚ちょうだい」
「駄目。八枚なんだから、四枚ずつ。………それより由紀、チョコソースこっちに侵入してきてる」
「いいじゃん、味変になるし」
「お前のピザにチリソースかけようか? 粉チーズと相性がいいんだぞ」
「げっ! ほんと最悪!」



歓迎会という名の夕飯はただの雑談で終わった。それでも、一応歓迎会ということで先輩たちがご飯を奢ってくれた。
会計の隣には、ここのファミレスとコラボをしているグッズが販売されていた。
『今話題の筋肉系VTuberのグッズ展開!! 筋肉を育てたい
そこの君をサポートする実用的なアイテムがたくさん!』と、大きなポスター付き。
「………由紀、お前まさかこれ目当てできたね?」
長谷川先輩が姫宮先輩に詰め寄る。両手いっぱいにグッズを抱えている姫宮先輩が、「歓迎会も嘘じゃないよ! それにグッズはランダムのもあるし、休みの日に何回か行くつもりだったんだから!」と、言い返していた。
そんな先輩たちを見た優一は俺を連れて先にファミレスを出た。戸惑う俺に、「すぐ終わるから先に外で待ってよう」と言われ、俺も慣れるしかないかと切り替えた。
その後、大きな紙袋を手にした姫宮先輩と長谷川先輩がファミレスから出てきた。姫宮先輩は、推しのグッズを集めるためにもう一店舗行くらしく、長谷川先輩もついて行くらしい。俺と優一はそこで先輩たちと別れ、胃に負担がかからないための、運動――食後の散歩をすることになった。