「今日はきてくれてありがとう、真尋くん」
「遠慮しないで、好きなものを頼んでいいのよ」
「あ、はい。こちらこそ……………」
一応、失礼のないように急遽スーツを作ったのだが、大丈夫だろうか。
あのあと、部屋に一人取り残された俺は今夜の服装に頭を悩ませた。夜に制服で行くのも補導されそうだし、かといって普通の私服ではご両親への印象としてよくないかもしれない。それに、優一の実家はお金持ちの家庭だ。
場所が高級レストランだった場合、絶対に浮くだろう。
優一からの連絡がくるまでに間に合ってよかった……………
中のワイシャツは学校指定の制服をそのまま使ったりと一からの作成ではないため、一日あればなんとか形にすることができた。
「こちらメニューよ、真尋くん」
「あ、ありがとうございます」
ん……………? メニューに写真がのってない…………
薄々気づいていたけど、やっぱり高級店じゃないか!
ここは、完全なる個室。内装には黒と赤が使われていて、落ち着いた雰囲気なからもどこか鮮やかさを感じる。
俺、大丈夫かな。スーツだから浮いてるってことはないはず。事前にどんなレストランかわかっていれば、そのお店に合わせて服を作ったのに!
優一のやつめ……………
俺の気も知らないで、優一は優雅にワイングラスを揺らしていた。当然中身はお酒ではなく、ジュースだが。
よし、こういうときは―――
数分後。優一のあとにメニューを聞かれた際、俺はできるだけ平常心を装って「同じものを」と、伝えた。
ふぅ、我ながら完璧だ。迷ったときはやっぱり前の人と同じ注文をすればいいよな。
慣れない場所と、未来の彼氏になるかもしれない人のご両親が目の前にいるからかどうしても緊張してしまう。
マナーは優一の真似をすればいいよな。こうなったのは優一の責任といっても過言ではない。
せっかく高級店に招待されたのだから、心ゆくまで料理を堪能するとしよう。
◇◇◇
あぁ…………美味しかった。高級店最高。
フォアグラが使われたサラダに、よくわからないけど絶対に高いお肉。多分羊肉なのかな。柔らかくて、めっちゃ美味しかった。他にも、フォアグラ、キャビア、トリュフが無料で食べられるなんて………………来てよかった。
それに―――優一が楽しそうだった。ご両親と話してる優一の顔は、とても満たされていて、本当に嬉しそうで。
普段の優一は、ずっとにこにこしているくせにどこか寂しげな表情を浮かべるから心配だった。
高校生らしい顔もできるんじゃないか。
「その顔は―――ふふ、満足したようだね、真尋」
「……………優一の方こそ、満足そうな顔してる」
「そう見える?」
「うん、見える」
「真尋のおかげだよ」
なんなんだよこいつ……………
朝は俺のことを放置してどこかに行ったくせに。
今は俺に笑いかけてくるなんて。
ちらりとご両親の表情を伺うと、俺と優一を交互に見ながら優しげな笑みを浮かべていた。
絶対勘違いされてる。
ていうかこれって、冷静に考えてみたら結婚の挨拶みたいだ。
―――いや、そんなこと考えちゃダメだ。
「あの、本日はありがとうございました! 俺はそろそろ…………」
お金を出してくれるのはありがたいけど、ここは早く帰るに限る。
俺が隙を見計らって立ち上がろうとすると。
「待ちたまえ。今日は真尋くんに話しておきたいことがある」
優一のお父さんが改まって背筋を伸ばし、俺の方を向く。
辺りにはどこか緊張した空気が漂っている。
もしかして、知らないうちに優一にすごく失礼なことをしちゃったとか? だから対面で怒られたりするのだろうか。
――
そう錯覚してしまうくらいには、空気が重かった。
「は、はい。えと、話したいこととは……………」
「うちの息子を救っていただいて、心より感謝申し上げます。優一にとって、貴方は私共の恩人でございます」
「私からもお礼を言わせてちょうだい。忙しくても家族の時間を作る。そんな当たり前なことに今まで気づかなかっただなんて。母親失格です」
ご両親は、深々と俺に頭を下げた。「優一を救った」だなんて。
少し大袈裟すぎる気もするが………………
「こうして家族で食事を共にすることが出来たのは、間違いなく貴方のおかげよ。本当にありがとう、真尋くん」
「優一から話は聞いている。人生を変えてくれたのだと」
おいおい……………そんなこと言ったのかよ。
「本当のことだよ。俺の人生に真尋がいてくれてよかった」
優一のお母さん、お父さん。そして優一の三人が姿勢を正して、もう一度視線を床に落として深く一礼をした。
「これからも末永く、優一とお幸せに」
………………俺の聞き間違いだろうか。「末永く優一とお幸せに」と聞こえたのだが。
「さて―――ずっと、真尋くんの時間をいただくわけにはいかないわよね」
「ああ。二人の時間も大切だろう」
「こうして気遣ってくれているんだから、行こうか真尋」
「遠慮しないで、好きなものを頼んでいいのよ」
「あ、はい。こちらこそ……………」
一応、失礼のないように急遽スーツを作ったのだが、大丈夫だろうか。
あのあと、部屋に一人取り残された俺は今夜の服装に頭を悩ませた。夜に制服で行くのも補導されそうだし、かといって普通の私服ではご両親への印象としてよくないかもしれない。それに、優一の実家はお金持ちの家庭だ。
場所が高級レストランだった場合、絶対に浮くだろう。
優一からの連絡がくるまでに間に合ってよかった……………
中のワイシャツは学校指定の制服をそのまま使ったりと一からの作成ではないため、一日あればなんとか形にすることができた。
「こちらメニューよ、真尋くん」
「あ、ありがとうございます」
ん……………? メニューに写真がのってない…………
薄々気づいていたけど、やっぱり高級店じゃないか!
ここは、完全なる個室。内装には黒と赤が使われていて、落ち着いた雰囲気なからもどこか鮮やかさを感じる。
俺、大丈夫かな。スーツだから浮いてるってことはないはず。事前にどんなレストランかわかっていれば、そのお店に合わせて服を作ったのに!
優一のやつめ……………
俺の気も知らないで、優一は優雅にワイングラスを揺らしていた。当然中身はお酒ではなく、ジュースだが。
よし、こういうときは―――
数分後。優一のあとにメニューを聞かれた際、俺はできるだけ平常心を装って「同じものを」と、伝えた。
ふぅ、我ながら完璧だ。迷ったときはやっぱり前の人と同じ注文をすればいいよな。
慣れない場所と、未来の彼氏になるかもしれない人のご両親が目の前にいるからかどうしても緊張してしまう。
マナーは優一の真似をすればいいよな。こうなったのは優一の責任といっても過言ではない。
せっかく高級店に招待されたのだから、心ゆくまで料理を堪能するとしよう。
◇◇◇
あぁ…………美味しかった。高級店最高。
フォアグラが使われたサラダに、よくわからないけど絶対に高いお肉。多分羊肉なのかな。柔らかくて、めっちゃ美味しかった。他にも、フォアグラ、キャビア、トリュフが無料で食べられるなんて………………来てよかった。
それに―――優一が楽しそうだった。ご両親と話してる優一の顔は、とても満たされていて、本当に嬉しそうで。
普段の優一は、ずっとにこにこしているくせにどこか寂しげな表情を浮かべるから心配だった。
高校生らしい顔もできるんじゃないか。
「その顔は―――ふふ、満足したようだね、真尋」
「……………優一の方こそ、満足そうな顔してる」
「そう見える?」
「うん、見える」
「真尋のおかげだよ」
なんなんだよこいつ……………
朝は俺のことを放置してどこかに行ったくせに。
今は俺に笑いかけてくるなんて。
ちらりとご両親の表情を伺うと、俺と優一を交互に見ながら優しげな笑みを浮かべていた。
絶対勘違いされてる。
ていうかこれって、冷静に考えてみたら結婚の挨拶みたいだ。
―――いや、そんなこと考えちゃダメだ。
「あの、本日はありがとうございました! 俺はそろそろ…………」
お金を出してくれるのはありがたいけど、ここは早く帰るに限る。
俺が隙を見計らって立ち上がろうとすると。
「待ちたまえ。今日は真尋くんに話しておきたいことがある」
優一のお父さんが改まって背筋を伸ばし、俺の方を向く。
辺りにはどこか緊張した空気が漂っている。
もしかして、知らないうちに優一にすごく失礼なことをしちゃったとか? だから対面で怒られたりするのだろうか。
――
そう錯覚してしまうくらいには、空気が重かった。
「は、はい。えと、話したいこととは……………」
「うちの息子を救っていただいて、心より感謝申し上げます。優一にとって、貴方は私共の恩人でございます」
「私からもお礼を言わせてちょうだい。忙しくても家族の時間を作る。そんな当たり前なことに今まで気づかなかっただなんて。母親失格です」
ご両親は、深々と俺に頭を下げた。「優一を救った」だなんて。
少し大袈裟すぎる気もするが………………
「こうして家族で食事を共にすることが出来たのは、間違いなく貴方のおかげよ。本当にありがとう、真尋くん」
「優一から話は聞いている。人生を変えてくれたのだと」
おいおい……………そんなこと言ったのかよ。
「本当のことだよ。俺の人生に真尋がいてくれてよかった」
優一のお母さん、お父さん。そして優一の三人が姿勢を正して、もう一度視線を床に落として深く一礼をした。
「これからも末永く、優一とお幸せに」
………………俺の聞き間違いだろうか。「末永く優一とお幸せに」と聞こえたのだが。
「さて―――ずっと、真尋くんの時間をいただくわけにはいかないわよね」
「ああ。二人の時間も大切だろう」
「こうして気遣ってくれているんだから、行こうか真尋」
