◇◇◇
そこから先はよく覚えていない。
気づいたら俺は優一のベッドで眠っていた。隣では、優一がすやすやと静かに寝息を立てている。……………裸で。
人の気も知らないで、熟睡してやがる。
とりあえずお風呂借りよ。
俺がベッドから体を起こそうとすると―――
「まひろー…………どこ」
優一の手が俺の腰を掴んだ。寝ぼけた声で俺の名前を呼びながら。
「ここにいるけど……………」
「よかった。今日は学校もないから、ゆっくりしよ?」
今日の夜にはご両親との食事会があるというのに呑気なものだ。それに昨日のことだって、どう切り出せばいいのか。
「―――優一、あのさ」
「昨日はすごかったね」
「なにが!?」
「ねぇ、俺たちもう幼なじみじゃいられないよ」
幼なじみ。そうだ、ずっと優一と幼なじみだって思っていた。
今だって思ってる…………はず。
「責任とって、俺と付き合って」
「それ、襲った側が言うセリフじゃないからな! それに、つ、付き合うたってなにしたらいいか………………」
「特別なことじゃなくていいんだよ。コラボカフェ行くとか、一緒にアニメ見るとか。―――ぬい活は一人で行ってね」
「なんでぬい活だけ?」
「真尋のそばに"ゆう"がいるから」
それだけ言うと、優一はふいっと顔を背けた。
もしかして拗ねてる? 前も、"ゆう"に嫉妬していたっぽいし。
推しと彼氏は違うのに。………………って、優一のこと、彼氏だと思ってるわけじゃないけど!! 断じて違う。これだけは絶対。
だって、認めたら………………認めてしまったら、もう優一とは幼なじみでいられない。
優一もそう言っていた。変わったんだ、昨日の夜から。俺たちの関係が。
「"ゆう"にもあの男にも、真尋は渡さない」
『あの男』とは、終人のことだろうか。終人は俺の写真をクラス中に広めろと指示を出した張本人。
理由は、「面白そうだったから」
今考えても、全く理解できない言動だ。けど、あの終人ならやりかねないと心のどこかで思ってしまう。
それほどまでに、「クズ」という言葉が似合う人物。
「感謝してるんだよ、あの男には。あれだけクズなら、真正面から張り合わなくて済むから。ライバルですらないよ。だって、あの男と俺なら真尋は俺を選ぶだろう?」
どこから湧いて出てくるのか、その自信は……………と、言いたいところだが、実際正しいからなにも言えない。
終人と優一なら、俺は迷わず優一と付き合う。
俺の考えが顔に出たのか、優一は「だろ?」と俺に同意を求めてきた。
「俺にしてよ、真尋。真尋のことを一番よく知ってるのは俺だから。―――本当はもっと早くこうしたかったけど、この時を待っていたんだよ」
「この時って……………」
「中学のときに真尋に告白しても振られていただろうから」
たしかに優一の言う通りだ。
中学の俺たちは、気まずい関係とでも言うべきだろうか。クラスての立ち位置も、グループも違う。友達と言えるかすら、
それに、中学の俺はとにかく自分に自信がなかった。
見た目も中身も陰キャで、積極的とは程遠い自分であるとわかっている。だから優一に告白されても、付き合うどころか疑っていたと思う。
「俺なんかを好きになるわけがない」「住んでる次元か違う」って。
もしかして優一は、そうならないためにこの時を待っていたってことなのか。
つまり、告白の成功率を上げるためにわざと告白しなかった?
「高校でダメなら、同じ大学に通っていただろうし大学でもダメなら、同じ職場にするつもりだった」
………………え? まさか、同じ高校なのは偶然じゃなくて狙ってた?
「これは全部最悪の場合を想定してのことだから、高校で
真尋と付き合うつもりで動いたよ。"俺を惚れさせたら"写真を返すって脅したのも、負けヒーロー部に誘ったのも。全部真尋と付き合うためのチャンスを作るため。仲良くなったところで家に誘って、お泊まりして…………俺を意識させてから告白するって段取り。だからさ、真尋。告白を断るって選択肢、あると思わないことだね」
言葉が出なかった。優一の本気を目の当たりにしたから。
俺と付き合うためにそこまでしていたなんて。
そして、思惑通り俺は優一を意識してしまった。悔しいけど、ドキドキした。ほんと悔しいけど。
「そういうことだから、夜に真尋のこと紹介するからね。食事の場所はあとでメールで送っておくから」
「えっ、優一!? どこ行くんだよ!」
俺が困惑するのも無理はない。優一は、言いたいことだけ言うと「用事があるから」と、部屋を出て行ったからだ。
部屋に残された俺は、まだベッドの上で座ったまま。
俺のこと好きなんじゃないのかよ!
心の中でそう叫ぶも虚しく、俺は渋々夜の食事会のためにいつもより念入りに準備をするのだった。
そこから先はよく覚えていない。
気づいたら俺は優一のベッドで眠っていた。隣では、優一がすやすやと静かに寝息を立てている。……………裸で。
人の気も知らないで、熟睡してやがる。
とりあえずお風呂借りよ。
俺がベッドから体を起こそうとすると―――
「まひろー…………どこ」
優一の手が俺の腰を掴んだ。寝ぼけた声で俺の名前を呼びながら。
「ここにいるけど……………」
「よかった。今日は学校もないから、ゆっくりしよ?」
今日の夜にはご両親との食事会があるというのに呑気なものだ。それに昨日のことだって、どう切り出せばいいのか。
「―――優一、あのさ」
「昨日はすごかったね」
「なにが!?」
「ねぇ、俺たちもう幼なじみじゃいられないよ」
幼なじみ。そうだ、ずっと優一と幼なじみだって思っていた。
今だって思ってる…………はず。
「責任とって、俺と付き合って」
「それ、襲った側が言うセリフじゃないからな! それに、つ、付き合うたってなにしたらいいか………………」
「特別なことじゃなくていいんだよ。コラボカフェ行くとか、一緒にアニメ見るとか。―――ぬい活は一人で行ってね」
「なんでぬい活だけ?」
「真尋のそばに"ゆう"がいるから」
それだけ言うと、優一はふいっと顔を背けた。
もしかして拗ねてる? 前も、"ゆう"に嫉妬していたっぽいし。
推しと彼氏は違うのに。………………って、優一のこと、彼氏だと思ってるわけじゃないけど!! 断じて違う。これだけは絶対。
だって、認めたら………………認めてしまったら、もう優一とは幼なじみでいられない。
優一もそう言っていた。変わったんだ、昨日の夜から。俺たちの関係が。
「"ゆう"にもあの男にも、真尋は渡さない」
『あの男』とは、終人のことだろうか。終人は俺の写真をクラス中に広めろと指示を出した張本人。
理由は、「面白そうだったから」
今考えても、全く理解できない言動だ。けど、あの終人ならやりかねないと心のどこかで思ってしまう。
それほどまでに、「クズ」という言葉が似合う人物。
「感謝してるんだよ、あの男には。あれだけクズなら、真正面から張り合わなくて済むから。ライバルですらないよ。だって、あの男と俺なら真尋は俺を選ぶだろう?」
どこから湧いて出てくるのか、その自信は……………と、言いたいところだが、実際正しいからなにも言えない。
終人と優一なら、俺は迷わず優一と付き合う。
俺の考えが顔に出たのか、優一は「だろ?」と俺に同意を求めてきた。
「俺にしてよ、真尋。真尋のことを一番よく知ってるのは俺だから。―――本当はもっと早くこうしたかったけど、この時を待っていたんだよ」
「この時って……………」
「中学のときに真尋に告白しても振られていただろうから」
たしかに優一の言う通りだ。
中学の俺たちは、気まずい関係とでも言うべきだろうか。クラスての立ち位置も、グループも違う。友達と言えるかすら、
それに、中学の俺はとにかく自分に自信がなかった。
見た目も中身も陰キャで、積極的とは程遠い自分であるとわかっている。だから優一に告白されても、付き合うどころか疑っていたと思う。
「俺なんかを好きになるわけがない」「住んでる次元か違う」って。
もしかして優一は、そうならないためにこの時を待っていたってことなのか。
つまり、告白の成功率を上げるためにわざと告白しなかった?
「高校でダメなら、同じ大学に通っていただろうし大学でもダメなら、同じ職場にするつもりだった」
………………え? まさか、同じ高校なのは偶然じゃなくて狙ってた?
「これは全部最悪の場合を想定してのことだから、高校で
真尋と付き合うつもりで動いたよ。"俺を惚れさせたら"写真を返すって脅したのも、負けヒーロー部に誘ったのも。全部真尋と付き合うためのチャンスを作るため。仲良くなったところで家に誘って、お泊まりして…………俺を意識させてから告白するって段取り。だからさ、真尋。告白を断るって選択肢、あると思わないことだね」
言葉が出なかった。優一の本気を目の当たりにしたから。
俺と付き合うためにそこまでしていたなんて。
そして、思惑通り俺は優一を意識してしまった。悔しいけど、ドキドキした。ほんと悔しいけど。
「そういうことだから、夜に真尋のこと紹介するからね。食事の場所はあとでメールで送っておくから」
「えっ、優一!? どこ行くんだよ!」
俺が困惑するのも無理はない。優一は、言いたいことだけ言うと「用事があるから」と、部屋を出て行ったからだ。
部屋に残された俺は、まだベッドの上で座ったまま。
俺のこと好きなんじゃないのかよ!
心の中でそう叫ぶも虚しく、俺は渋々夜の食事会のためにいつもより念入りに準備をするのだった。
