陰キャだった俺が垢抜けたら陽キャ幼なじみに執着されて、抱かれました

「綿貫真尋。身長百六十一センチ。体重、五十キロ。好きな食べ物。なんでも好きだが、特に肉。そのくせ心配になるくらい細い。趣味はぬい活。寂しいときにぬいぐるみを抱きしめて寝る癖がある。料理が上手くて、味付けも俺好み。毎日真尋の作った味噌汁が飲みたい。それに、心配性でおせっかいだ。頼んでもないのに、ご飯を作ったり両親を家に呼んだりする。人一倍見た目に敏感で気を遣ってて昔から綺麗なのに、さらに綺麗になった。少し流されやすいところもあるけど、強引で自分の意見を曲げない。本当に厄介で俺のペースを掻き乱してくるのに、どうしようもなく惹かれた」
優一の口からすらすらと出てくる、自分でも気づかなかった部分。それは、外見だけじゃなくむしろ内面ばかりで。
幼なじみなのに優一のこと全然知らなくて、一緒にいるたびに新しい一面ばかり見えたのに。優一はずっと、俺よりも俺のことを見ていたのか。
なんだか優一のことを直視できない。目を見てると体中が熱くなるから。
視線を逸らす俺の頬を、優一は片手でむにっと掴む。
「そうやって恥ずかしがると、すぐに目を逸らすところも好きだよ」
優一の手のせいで顔を固定されてるから、目線が無理やり前を向かされる。
今やっと、ちょっとだけわかった気がする。
大切な幼なじみなのになんで苦しいのか。嫌いじゃないのに。
嫌いじゃないから苦しいんだ。




人はときに、嫌いよりも好きの感情に振り回される。
嫌いだから苦しいんじゃない。好きだから苦しいんだ。





俺の好きなアニメのセリフだ。
前に優一の家で停電になったときの、あのセリフの続き。
あのあと、どうしても気になって家に帰って一人で何回も同じところを再生したっけ。
「"人はときに、嫌いよりも好きの感情に振り回される。嫌いだから苦しいんじゃない。好きだから苦しいんだ"。このセリフ、何回も家で同じシーンを見た。同じ声のトーン、同じセリフ。同じ環境。それなのに、毎回違って聞こえるのはなんでだろう」
優一も同じことをしていたのか。あのシーンを何度も見ていた。俺だけじゃなかった。
そうわかった途端、体の力が抜けてずるずると床に座り込んだ。顔から火が出るほど恥ずかしくて、鏡を見なくてもわかった。きっと俺の顔は真っ赤なんだって。
ずるいよな。好きって言われたら、誰だって意識しちゃうだろ。好意を向けられることに嫌悪感を抱く人なんているのだろうか。
俺は、人の好意を無下にしたくない。相手が、幼なじみの優一なら、なおさらだ。
それに、全く優一を意識していないと言えば嘘になる。
優一にドキドキしていた瞬間は間違いなくあった。
それは今もきっと―――
「真尋は俺のことどう思ってる?」
「そんないきなり聞かれたってわかんない………」
「"わかんない"って顔してないよ、真尋。気づいてる? 今日は誰にも邪魔されないね。二人きりだから」
「ま、待って。メイクが崩れて―――」
なに、この雰囲気。いつもの優一じゃないみたいだ。なんとか優一のご両親が戻ってくるまで時間稼ぎをしないと。
…………優一の両親が帰ってくるのっていつだ。
幼なじみなら、これくらい知っておくべきだった。
とにかく、優一の気を逸らさないと―――
「大丈夫。すっぴんの真尋でも余裕で抱けるから」
「だ…………!? 抱く!?」
俺の驚愕の表情なんて見えていないかのように、優一は軽々と俺を抱き上げた。考えなくてもわかる。向かう先は寝室なのだと。
「待って、話せばわかる! 俺たち幼なじみだろ!」
「幼なじみの関係性でいたいなら、本気で抵抗しないとね」