負けヒーロー部。負けヒーローの俺でも勝ちヒーローになれますか

いつからそこにいたのか。長身の男がひょいっと、男から写真を取り上げた。
「優一……」
そこにいたのは幼なじみの高野優一だった。
家が近くて小学生の頃からずっと一緒に過ごしてきた唯一のオタク友達。中学に上がってから、クラスが離れちゃって話す機会が次第に減っていった。高校生になって、廊下で優一を見かけることはあっても声をかけるのはなんだか気恥しかった。二年生になって優一と同じクラスになったけど、陽キャに囲まれている優一に話しかけられず、ちらちらと横目で見ることしかできなかった。
……優一は元々三軍だった俺とは違う。正真正銘、本物の一軍。友達も多くて、クラスの中心はいつもあいつだった。だから、優一はもう俺のことなんか忘れちゃってるだろうな。俺には優一しかいないのに。
「真尋、大丈夫?」
「優一、俺は大丈――」
「あ、やっぱ言わなくていい。真尋は大丈夫じゃないときに大丈夫って言うだろ? 知ってるよ」
優一は優しく微笑んだかと思うと、その写真を制服の内ポケットに入れた。
……ん? 入れた?
「優一? なにしてるの?」
「真尋の写真は、俺が持っておくよ。安心でしょ?」
「え、いやなんで? 捨てていいから!」
「それこそなんで? もったいないよ」
「……なにが?」
「おい、お前ら! 俺を空気みたいに扱うんじゃねぇ!」
「ごめん、気づかなかった。君が空気みたいに薄かったから、つい」
「てめぇっ!」
(優一、すごい煽るじゃん……)
この場をどう収めようかあたふたしていると、担任の先生が教室に入ってきた。先生が、「さっさと席につけー!」と声を張り上げると、先程まで俺を嘲笑っていたクラスメイトたちも、さすがにこれ以上続ける気はないのか各々、自分の席についた。
俺も慌てて自分の席に座る。優一の一個前の席に。なんか、後ろから視線を感じるのは気のせいだろうか。
「放課後にまた話そう、真尋。場所は、ボランティア部の部室ね。こなかったら、この写真どうしようかな〜?」
(……耳元で囁くな!! これだから陽キャは!)
俺は後ろを振り返ることが出来なかった。きっと耳まで真っ赤だろうから。
◇◇◇
「………ここ、だよな? ボランティア部って」
放課後、俺はボランティア部の部室前にいた。
めっちゃ静かだけど、人なんているのかな。
ボランティア部の周辺はとても静かで物音一つしない。なにせ部員が少ないそうで、誰も使われていない空き教室がボランティア部の部室らしい。
最初はどこに部室があるかわからなかったから、少し迷ってしまった。遅刻はしてないはず。
俺はどうにかしてあの写真を取り返さなければならない。
あの写真は陰キャだった頃の俺がうつっている、いわば黒歴史。その黒歴史の写真がクラスメイトたちに見られただけじゃなく、優一が持っているなんて……
捨てていいって言ったのに、なんで持ってるんだよ!
これ以上誰かにあの写真を見られたらやばい。あいつは捨てる気がなさそうだったから、取り返してこっちで処分しないと。
俺は意を決して、部室の扉をノックしてみる。何回か繰り返したけど、返事は返ってこない。本当にここであってるんだよな?
「あの! 誰かいますか!」
「はーい」
後ろから声がしたかと思うと、その直後にぞわりと全身の毛が立つような感覚に襲われる。
勢いよく後ろを振り返ると、悪戯が成功したように口角を上げる優一が立っていた。
「うわぁ!? 優一!? いるならいるって言って!」
「そんなに驚かなくてもいいのに。約束通り、きてくれたんだね」
「そりゃ、写真を返してもらうためだから!」
「えー、やだ」
「なんで!」
「秘密。そんなに写真を返してほしいなら、俺の言うこと聞いて?」
「言うことって……」
「ここで立ち話もなんだし、入ってよ」