木漏れ日の中の光

 前に働いていた運転手が身体を壊して辞めたとのことで、今の運転手になった。

 バスの中を歩いて、いつもの定位置に座ろうと思い、周りを見渡した。

 ――いた。

 そこには、分厚い本を読んでいる子がいた。

「鈴子(すずこ)。おはよう」

 鈴子は眼鏡の縁をカチャッと直して、私の方へ顔を向けた。

「あ、おはよう。花染(はなぞめ)」

 よぉと手を挙げてから、鈴子は本を閉じた。

「今日さ、評価テストあるよね」

 私が鈴子に話しかけると、勢いよく私の顔に近づき、なぜか匂いを嗅いできた。

「……鈴子。なに、近いんだけど……」

 私は目を泳がせて、鈴子の顔から少し身を引いた。

「あ、ごめん。なんかお腹空いてきたかも。あと、テストのことで頭いっぱいで」

「え? 鈴子。勉強したんでしょ」

 鈴子は毎回、テストになると必ず勉強をしてくる。

 それが当たり前のように。

 そんな鈴子が、まさかね……

 すごく深刻な悩みがあるのかな。

 どうしたんだろう。

「…それがね、昨日からね……」

 下を向いてから、充血した目を見開いて、私に言う。

「…うん」

「私、これにハマったの! 見て!」